けもの塾

クマ

「このまま地球温暖化ちきゅうおんだんかなどによる環境かんきょう悪化あっかつづけば、2100ねんまでにはホッキョクグマは絶滅ぜつめつするおそれがある」というニュースをいたことがあるのではないでしょうか。

一方いっぽう日本にほんではヒグマにおそわれて、おおけがをしたというニュースをみみにします。

キャラクターとしてはとても身近みぢかなのに、世界せかいにはどんなクマがいるのか、クマはどのような能力のうりょくをもつのか、そしてクマは本当ほんとう凶暴きょうぼうなのか、なかなかわからないですよね。

クマを生物分類学的せいぶつぶんるいがくてきあらわすと「哺乳類ほにゅうるい食肉目しょくにくもく(ネコもく) - イヌ亜目あもく - クマ下目かもく - クマ上科じょうか ― クマ」となります。クマ下目かもくにはイタチ上科じょうか、クマ上科じょうか、そしてなんとアシカやセイウチ、アザラシなどの海獣かいじゅう海生哺乳類かいせいほにゅうるい)のグループである鰭脚ききゃく下目かもくもあります。ジャイアントパンダやレッサーパンダなどは、クマ下目かもくにははいるものの、クマ上科じょうかではなく、イタチ上科じょうかはいります(ただ、この分類ぶんるいには色々いろいろせつがあります)。

さあ、クマ動物どうぶつたちのことを調しらべてみましょう。

 

クマ動物どうぶつはいつから地球ちきゅうにいるの?

うえから地面じめんりた祖先そせんたち

最近さいきん、ニューヨークの研究けんきゅうチームがスーパーコンピューターで膨大ぼうだい化石かせき分子ぶんし情報じょうほう解析かいせきした結果けっか、すべての胎盤たいばん母体内ぼたいないでおなかのなかあかぼう栄養えいようをあげるためにできる器官きかん)のある哺乳類ほにゅうるい真獣類しんじゅうるい」の祖先そせんは、いまから6,600万年前まんねんまえごろにあらわれた全哺乳類ぜんほにゅうるい祖先そせんプロトゥンギュラトゥム・ドナエ(Protungulatum donnae)というトガリネズミのような姿すがたかたちをもち、樹上じゅじょう生活せいかつをしていた動物どうぶつであるというせつ発表はっぴょうされたこと、「ネズミ」のなかの「まずはネズミの歴史れきしから」でおはなししましたね。この仲間なかまから、やく6,500万年まんねん~4,800万年前まんねんまえ、ヨーロッパからきたアメリカに棲息せいそくし、樹上じゅじょうりをしていたミアキス(Miacis/「動物どうぶつはは」という意味いみ)という食肉類しょくにくるい祖先そせんあらわれたのです。

それらのちいさな動物どうぶつうえおもにもっと小ちいさな草食動物そうしょくどうぶつ捕食ほしょくしていましたが、個体数こたいすうえ、生存競争せいぞんきょうそうがはげしくなり、うえから地上ちじょうへ、そしてもりから草原そうげんていくものがあらわれてきました。それがイヌ祖先そせんとなり、もりに残ったものがネコ科の祖先となっていったのです。草原そうげんったものの、そこに適応てきおうすることができなかった動物どうぶつなかにはもりにもどるものもありました。これはやく2,000万年前まんねんまえ中央ちゅうおうヨーロッパ(現在げんざいのドイツ・オーストリア・ポーランド・チェコ・スロヴァキア・ハンガリーあたり)での出来事できごとで、それがクマ祖先そせんやイタチ祖先そせんとなり、うみったものはアシカやアザラシなどの鰭脚類ききゃくるい進化しんかしていったとかんがえられています。

最初 さいしょ、クマはちいさかった⁉︎

初期しょきころのクマはからだちいさく、樹上じゅじょう おも住処すみかとしていました。からだこそちいさいものの、奥歯おくば現在げんざいのクマのように、植物しょくぶつをもすりつぶすことのできるうすのようなかたち臼歯きゅうし)に進化しんかをしていたようです。

巨大きょだいグマの誕生たんじょう

ショートフェイスベアとサーベルタイガー(イメージ)

1,400万年まんねん~80万年前まんねんまえ南北なんぼくアメリカ大陸たいりくには、体重たいじゅうが1tとんえ、がると4めーとる前後ぜんごにもなる巨大きょだい非常ひじょう凶暴きょうぼうなショートフェイスベア(Arctodus)がいたことが各地かくちから出土しゅつどする化石かせきからかっています。(現在げんざい日本にほん棲息せいそくするヒグマのオスの体長たいちょうは2〜2.8mめーとる体重たいじゅうは250〜500kgきろぐらむ。ヒグマとくらべても、ショートフェイスベアがどれほどおおきかったかわかりますよね。)このクマは名前なまえとおり、いまのクマよりもはなみじかく、巨大きょだいきば臼歯きゅうしっており、なが四肢ししでかなりのスピードではしることができたようです。草原そうげんにはラクダの祖先種そせんしゅやバイソン、ウマなどのおおきなの草食動物そうしょくどうぶつおお棲息せいそくしていて、これらをそのめぐまれた体格たいかく身体能力しんたいのうりょく捕食ほしょくをしていたとおもわれます。

みなみアメリカのショートフェイスベアは、その移入いにゅうしてきたハイイログマや人類じんるいとの生存競争せいぞんきょうそうのすえ、大形おおがたのものは姿すがたし、それほどおおきくないものがのこってきました。ところが、北米ほくべいのショートフェイスベアのほうは、その地域ちいきにマンモスやオオナマケモノなど氷河期ひょうがき動物どうぶつ豊富ほうふにいたせいなのか、ますます大形おおがたになっていったようです。

絶滅ぜつめつしたホラアナグマ

ホラアナグマグマ(ルーマニアの切手きって

ヨーロッパや中東ちゅうとうではやく30万年前まんねんまえにホラアナグマ(Ursus spelaeus)という現在げんざいのヒグマにちか外見がいけんをもつクマがあらわれました。雑食性ざっしょくせい冬眠とうみんをすることにより氷河期ひょうがきびたものの、食物しょくもつ生息場所せいそくばしょもとめる人間にんげんとの競争きょうそうけるなどの理由りゆうにより、24,000年前ねんまえには絶滅ぜつめつをしたとかんがえられています。名前なまえの「ホラアナ(洞窟どうくつ)」は、化石かせきがたくさん発掘はっくつされたのが洞窟どうくつだったためにつけられたのであって、棲息場所せいそくばしょ洞窟どうくつだったわけではありません。ねんのため。


クマの進化しんかはすぐれた適応力てきおうりょくのおかげ

こうして絶滅ぜつめつするクマもいる一方いっぽう、530万年まんねん~10万年前まんねんまえにはユーラシア大陸たいりくからきたアフリカで雑食性ざっしょくせいにつけたエトルリアグマ(Ursus etruscus)と呼ばれる小形こがたのクマからたか環境かんきょう適応能力てきおうのうりょくをもったヒグマへ進化しんかをしていきました。

現在げんざい絶滅ぜつめつ心配しんぱいなホッキョクグマですが、最近さいきんではヒグマの亜種あしゅハイイログマとの交雑種こうざつしゅ雑種ざっしゅ)などもつかっています。クマは現在げんざいでもそのつよ生命力せいめいりょく、そして環境かんきょうへの適応力てきおうりょくによって進化しんかしているともうことができるのです。

 

クマにはどんなクマがいるの?

世界せかいには7種類しゅるい ー メガネグマ、マレーグマ、ナマケグマ、ツキノワグマ、ホッキョクグマ、ヒグマ ー のクマ動物どうぶつ棲息せいそくしています。(ジャイアントパンダをクマれている事典じてんなどもありますが、ぼくはクマにはれない。その理由りゆうは、「おしえて、今泉先生いまいずみ先せんせい!」の「ジャイアントパダはクマじゃないの?」をんでください。)

【クマ科の動物】

[ ]ない表示ひょうじは、棲息地せいそくち成獣せいじゅう平均体重へいきんたいじゅう(kgきろぐらむ)

メガネグマ亜科あか(Tremarctinae)
メガネグマぞく Tremarctos
○メガネグマ (T. ornatus)[南米なんべいやペルーの熱帯ねったいジャングル/150㎏]

メガネグマ

クマ亜科あか (Ursinae)
マレーグマぞくHelarctos)
○マレーグマ (H. malayanus)[東南とうなんアジア/60㎏]

マレーグマ

ナマケグマぞく (Melursus)
○ナマケグマ (M. ursinus)[インド、ネパール、バングラデシュ、ブータン、スリランカ/100㎏]

ナマケグマ

クマぞく (Ursus)
○ツキノワグマ(U. thibetanus)[ひがしアジアから東南とうなんアジア、日本にほん中国ちゅうごく/50~120㎏]
  ・ニホンツキノワグマ(U. t. japonicus)
  ・ヒマラヤツキノワグマ(U. t. laniger)
  ・パキスタンツキノワグマ (U. t. gedrosianus)
  ・タイワンツキノワグマ (U. t. formosanus)
  ・ウスリーツキノワグマ (U. t. ussuricus)
  ・シンセンツキノワグマ (U. t. mupinensis)
  ・チベットツキノワグマ(U. t. thibetanus
○ヒグマ (U. arctos)[ヨーロッパからアジア、きたアメリカ/オス500㎏、メス300㎏]
  ・エゾヒグマ (U. a. yesoensis
  ・ハイイログマ (別名べつめい:グリズリー/U. a. horribilis
  ・ヨーロッパヒグマ(U. a. arctos
  ・チベットヒグマ(別名べつめい:ウマグマ/U. a. pruinosus
  ・コディアックヒグマ ( U. a. middendorfii
  ・ヒマラヤヒグマ (U. a. isabellinus
  ・アカグマ (U. a. collaris
  ・シリアグマ (U. a. syriacus)ほか
○ホッキョクグマ (U. maritimus)[北極大陸ほっきょくたいりくきたアメリカ大陸たいりくやユーラシア大陸たいりく北部ほくぶ/オス600㎏、メス200~300㎏]
○アメリカグマ(別名べつめい:アメリカクロクマ/ U. americanus)[アメリカ合衆国がっしゅうこく、カナダ、メキシコ/400㎏]
  ・クロアメリカグマ、アメリカクロクマ (U. a. americanus)
  ・アオアメリカグマ (U. a. emmonsii
  ・シロアメリカグマ、アメリカシロクマ (U. a. kermodei
  ・オリンプスクロクマ(U. a. altifrontalis
  ・クイーンシャーロットクロクマ(U. a. carlottae
  ・クリイロアメリカグマ(U. a. cinnamomum
  ・フロリダアメリカグマ(U. a. floridanus)
  ・ニューファンドランドクロクマ(U. a. hamiltoni
  ・ルイジアナアメリカグマ (U. a. luteolus) ほか

アメリカグマ(アメリカクロクマ)

 

日本 にほんにはどんなクマ動物どうぶつがいるの?

日本にほん国土こくどの67ぱーせんと森林しんりんです。このゆたかな森林しんりんには、ヒグマとツキノワグマの2しゅ棲息せいそくしています。

【ヒグマ】

世界せかいのヒグマ

世界せかいでもっとも棲息地域せいそくちいきひろいクマは、ヒグマ。また、ホッキョクグマとならんでクマで最大さいだい体格たいかくをもつクマもヒグマです。ヒグマの棲息地せいそくちは、ヨーロッパからアジア、そしてきたアメリカ大陸たいりくというように北半球きたはんきゅうひろ地域ちいきにおよびます。また、さまざまな自然環境しぜんかんきょう広範囲こうはんい棲息せいそくをしているため、おおきさなどの形態けいたいおおきくことなるのも特徴とくちょうです。最大さいだいはアメリカのアラスカしゅうコディアックとう棲息せいそくするコディアックヒグマで、オスは体重たいじゅう700きろぐらむ体長たいちょう3めーとるえることもあります。

コディアックヒグマ

最小さいしょうはチベットの山奥やまおく棲息せいそくするチベットヒグマで、体重たいじゅうは100〜120kgきろぐらむ体長たいちょう1.5〜1.6mめーとるほど。うまのようにはしることから、ウマグマともばれています。雪男ゆきおとこのイェティはこのチベットヒグマではないかというせつもあるようです。

チベットヒグマ(ウマグマ)

祖先そせん完全かんぜん肉食動物にくしょくどうぶつであったクマも、進化しんかするにつれ、環境かんきょうによって肉食にくしょくだけでなく、などの植物性しょくぶつせいのものをすりつぶすことのできるつようになり、雑食性ざっしょくせいへとなっていったのです。中でも ヒグマの適応能力てきおうのうりょくはとてもすぐれているため、世界せかいでもっともひろ棲息せいそくすることができているのです。

日本にほんのヒグマ「エゾヒグマ」

日本にほんのヒグマは北海道ほっかいどうのみに棲息せいそくし、エゾヒグマとばれています。その遺伝子いでんし研究けんきゅうしたところ、エゾヒグマは氷河期ひょうがきにアジア大陸たいりくから本州ほんしゅうとおって北海道ほっかいどうわたった種類しゅるい樺太からふととおってアジアから北海道ほっかいどうはいった種類しゅるい、もうすこあとから樺太からふとからわたってきたヨーロッパけいのクマにちか種類しゅるいなど3系統けいとうのクマがいることがわかっています。本州ほんしゅう四国しこく九州きゅうしゅうでもヒグマの化石かせき出土しゅつどしていることから、北海道ほっかいどうよりみなみにもかつてはヒグマが棲息せいそくしていたとかんがえられます。 やがて氷河期ひょうがきわりとともに地球ちきゅう気温きおんがり、樹木じゅもくがどんどん成長せいちょうし、森林しんりんもどんどんひろがっていきました。冷涼地れいりょうちまれで草原そうげん棲息地せいそくちとしていたヒグマは、広大こうだい草原そうげんのこきた地方ちほう移動いどうせざるをなかったのだとかんがえられています。また、植生しょくせい変化へんかしたことにより、本州ほんしゅうのヒグマは消滅しょうめつしたようです。

現在げんざい北海道ほっかいどうやく55ぱーせんと地域ちいきにエゾヒグマが棲息せいそくしています。エゾヒグマは日本にほん最大さいだい陸棲生物りくせいせいぶつで、オスは体重たいじゅうが150~400きろぐらむ体長たいちょう2めーとる前後ぜんごほど、メスは体重たいじゅうが100~200きろぐらむ体長たいちょう1.5めーとる前後ぜんごにもなります。ツキノワグマにくらべてやや肉食性にくしょくせいつよく、サケやマスが産卵さんらんのためにのぼってくるかわちかくにあれば、それらのさかなとらえるほか、シカ、ウサギ、ネズミ、昆虫こんちゅうなかでもに栄養価えいようのある幼虫ようちゅう攻撃性こうげきせいすくないアリ ー そして屍肉しにくなども捕食ほしょくします。また、栄養豊えいようゆたかなコクワやヤマブドウ、ドングリなどのやフキやセリなどの山菜さんさい、セリくさなどもおおべています。

エゾヒグマ

北海道ほっかいどう先住民族せんじゅうみんぞくであるアイヌのひとたちは、ヒグマをやまかみ(アイヌで「キムンカムイ」)としてあがめ、狩猟しゅりょうによってにしたにく毛皮けがわかみからのさずかりものとして感謝かんしゃしながら利用りようしてきた文化ぶんかがあります。ところが、農業のうぎょうおこなひとたちのかずり、また自然環境しぜんかんきょう 変化へんかにより、人里ひとざとにおりてきて人間にんげん被害ひがいあたえることもえてきています。現在げんざいではエゾヒグマの駆除くじょ保護ほご両方りょうほう計画けいかく北海道ほっかいどう各地かくちすすめられています。

エゾヒグマ(北海道ほっかいどう 知床半島しれとこはんとう


【ツキノワグマ】

温暖おんだん地域ちいきのクマ

ツキノワグマはアジアクロクマとかヒマラヤグマともばれるクマで、いまから200~150万年前まんねんまえ、アジア大陸たいりくなかでも温暖おんだん地域ちいきをルーツとしています。現在げんざいでは、イラン、アフガニスタンの西にしアジアから東南とうなんアジア、そして中国ちゅうごく台湾たいわん韓国かんこくなどのひがしアジア、そしてロシア東部とうぶにまで棲息せいそくしています。

ヒマラヤツキノワグマ(インド〜パキスタンに棲息せいそく

ツキノワグマの「ツキ」はむねにあるしろ月型つきがた模様もようのことで、なかにはこの模様もようのないくろなクマもいます。

ニホンツキノワグマ

日本にほんにいるツキノワグマはニホンツキノワグマとばれるツキノワグマの亜種あしゅ日本固有亜種にほんこゆうあしゅ)で、本州ほんしゅう四国しこくの33都府県とふけん棲息せいそくしています。このクマは氷河期ひょうがき日本にほん陸続りくつづきとなったアジア大陸たいりくからわたってきたようで、氷河期ひょうがきわって日本にほんがアジア大陸たいりくからはなされたあとも、ふる特性とくせいたもってきたのです。ニホンツキノワグマはかつては九州きゅうしゅうにも棲息せいそくをしていて、いまでは絶滅ぜつめつしたとの報告ほうこくもありますが、まだ生存せいぞんしているというせつもあり、実際じっさいはまだはっきりとしていません。九州きゅうしゅう現在げんざいクマが棲息せいそくしていないのであれば、九州きゅうしゅう森林しんりんにはドングリなどをみのらせることのない常緑樹じょうりょくじゅ針葉樹しんようじゅおおいことなどを理由りゆうとしてあげることができます。(ドングリは、落葉広葉樹らくようこうようじゅのブナ樹木じゅもくです。)

ニホンツキノワグマ

ニホンツキノワグマはヒグマよりもちいさく、オスは体長たいちょう1.5mめーとる前後ぜんご体重たいじゅう120きろぐらむほど。メスは体長たいちょう1.3めーとる体重たいじゅう90きろぐらむほどです。大陸たいりくのツキノワグマよりもちいさく、森林しんりん住処すみかとしているために、木登きのぼりが得意とくいのひらのうし半分はんぶんがないのはのぼることへの適応てきおうともかんがえられます。(ヒグマの場合ばあいどもの時以外ときいがいはほとんどのぼらず、あな性質せいしつがあります。ヒグマの地面じめんにつくのひらのうし半分はんぶんにだけえているのは歩行ほこうヘの適応てきおうかんがえられます)。

食性しょくせいはヒグマにているものの、食物しょくもつの90ぱーせんと植物性しょくぶつせいのものです。あきにはブナ・コナラ・ミズナラなどのドングリをもとめて、やま移動いどうしています。

ツキノワグマ(東京とうきょう奥多摩おくたま

クマと人間にんげん共存きょうぞんについて

ヒグマ同様どうよう自然環境しぜんかんきょう変化へんかによってドングリるい不作ふさくになったり、キャンプなどでやまおとずれた人間にんげん興味半分きょうみはんぶん人間にんげんものをクマにあたえてしまうことなどにより、人里近ひとざとちかくに出没しゅつぼつするクマがえてきています。そのために事故じこもたびたびきています。ツキノワグマがもり広葉樹こうようじゅおおく、ほか動物どうぶつにとっても大切たいせつ生活圏せいかつけんです。大切たいせつ生態系せいたいけいまもるため、そして人間にんげんとクマが接触せっしょくする不幸ふこう事故じこふせぐためにも、もりまもり、人間にんげんとクマがきちんとけのできる環境かんきょうととのえる必要ひつようがあるのです。

 

クマは全部ぜんぶ冬眠とうみんをするの?

冬眠とうみんちかづくアメリカクロクマ

クマは気温きおんがり食料しょくりょうにはいりにくくなるふゆるため、冬眠とうみんをします。晩秋ばんしゅうもの急激きゅうげきりなくなると、1にちねむ時間じかんがだんだんとながくなり、あなにこもるようになると、ねむつづけます。35前後ぜんごまで体温たいおんがり、エネルギー消費しょうひります。しかしねむりはふかくなく、足音あしおとなどがこえればまします。これを普通ふつう冬眠とうみん区別くべつして、「ふゆごもり」とうことがあります。

ただ、「冬眠とうみん」と「ふゆごもり」や「冬越ふゆこし(越冬えっとう)」という言葉ことばにはっきりとしたちがいはありません。英語えいごではすべて「hibernation(ハイバネーション)」とびます。

このようにクマはふゆ冬眠とうみんをするイメージがありますが、全部ぜんぶのクマが冬眠とうみんするかとえば、こたえはノー(No)です。西日本にしにほんふゆでもわりとあたたかくものがある地域ちいきでは冬眠とうみんしないクマもられます。


動物どうぶつ冬眠とうみん仕組しく

ふゆいけそこほうさかなあつまってじっとしていますよね。このような魚類ぎょるいやカエル、イモリといった両生類りょうせいるい、ヘビやトカゲ、カメなどの爬虫類はちゅうるい、そして昆虫こんちゅうかいなどはそと気温きおんによって体温たいおん変化へんかする変温動物へんおんどうぶつい、気温きおんがるふゆには不活発ふかっぱつ仮死状態かしじょうたいとなり、簡単かんたんにはましません。

冬眠とうみんするカタツムリ

それでは、そと気温きおん変化へんかしても体温たいおん一定いっていたもつことのできる動物どうぶつ(こうした動物どうぶつ恒温動物こうおんどうぶついます)の哺乳類ほにゅうるいはどうでしょうか。地球上ちきゅうじょうには現在げんざいわかっているだけでやく6,000種類しゅるい哺乳動物ほにゅうどうぶつがいますが、そのなか冬眠とうみんするのはやく200種類しゅるいほどです。ネズミやコウモリのような小形こがた哺乳類ほにゅうるい冬眠とうみん場合ばあい体温たいおんがだんだんとがるのにつれて1にち睡眠時間すいみんじかん次第しだいながくなり、やがてふかねむりにつきます。低体温ていたいおんのままねむ期間きかんといつもとおりの体温たいおんにもどり、あきあいだたくわえた食料しょくりょうべたり(シマリス)、あたりのむしなどをべてみずんだり(コウモリ)して、排泄はいせつおこな期間きかん交互こうごかえしています。

冬眠とうみんするトウブシマリス

大形おおがた哺乳動物ほにゅうどうぶつ冬眠とうみんをするのはクマだけ⁉︎

そのとおり、大形おおがた哺乳類ほにゅうるい冬眠とうみんをするのはクマだけです。クマの場合ばあい冬眠とうみんあいだますことなく一冬ひとふゆごします。クマはとくからだおおきいので、そと気温きおんひくくなっても体温たいおんはそれほどがりません。それでも代謝率たいしゃりつ低下ていかする機能きのうそなわっているのです。代謝率たいしゃりつとは、個体こたい食物しょくもつからたエネルギーをどれくらい、どのように使つかうのかということです。ふゆるまでにたっぷりとからだたくわえた脂肪しぼう冬眠とうみんあいだにエネルギーげんとして使つかいますが、代謝率たいしゃりつひくいので、排泄はいせつなどのためにます必要ひつようがなく、一冬ひとふゆえることができます。

妊娠にんしんしているメスの場合ばあいには、冬眠とうみん期間中きかんちゅうどもを出産しゅっさんし、授乳じゅにゅうをしながらはるむかえます。

最近さいきんではふゆ冬眠とうみんしているはずのクマにくわし、おそわれたというニュースをきます。冬眠とうみんするはずのクマが冬眠とうみんしないのは、「しない」のではなく、「できない」からです。これはあきにたくさんべておくはずのドングリなどが自然環境しぜんかんきょう変化へんか人間にんげん原因げんいん不作ふさくとなり、十分じゅうぶん脂肪しぼうをためておくことができなかったためです。やま自然しぜんまもることがどんなに大切たいせつか、クマの冬眠とうみんとおしてもわかりますよね。

あき食料しょくもつもとめて(アメリカクロクマ)

冬眠とうみんをしないクマたち

1年中ねんじゅう気候きこう温暖おんだん地域ちいきむマレーグマやメガネグマなどは、食料しょくりょう豊富ほうふなために冬眠とうみんしません。

また、動物園どうぶつえん飼育しいくされているクマもエサの心配しんぱいがないため、冬眠とうみんしないのです。

一方いっぽう、ものすごいさむさの北極圏ほっきょくけんらすホッキョクグマはどうでしょうか。北極圏ほっきょくけんではふゆこそアザラシなど、ホッキョクグマの食料しょくりょうとなる動物どうぶつあつまる時期じき。そのため、ホッキョクグマはふゆには冬眠とうみんしないのです。積極的せっきょくてきりをしながらからだ栄養えいようをたくわえます。( この時期じき、メスはあなってどもをみます。まれたばかりの子熊こぐまあななか母親ははおやはるまでごします。)ところがなつになると、アザラシなどの動物どうぶつはいなくなるため、ほかのクマが冬眠とうみんとき代謝たいしゃげるのとおなじような状態じょうたいでホッキョクグマは生活せいかつをしていることが最近さいきんわかってきました。

 

このように、おなじクマ動物どうぶつであっても、棲息せいそくする環境かんきょうによって冬眠とうみんをするかしないかがまるのです。

 

ホッキョクグマはどうして南極なんきょくにいないの?

ホッキョクグマは、地上ちじょう最大さいだい肉食動物にくしょくどうぶつきたアメリカ大陸たいりくやユーラシア大陸たいりく北部ほくぶ北極海ほっきょくかい沿岸えんがん棲息せいそくしています。

よくホッキョクグマとペンギンが一緒いっしょ流氷りゅうひょうっているイラストなどを街中まちなかかけますよね。ところが、ホッキョクグマは北極圏ほっきょくけん、ペンギンは南極大陸なんきょくたいりくにいて、ホッキョクグマとペンギンは自然界しぜんかいでは出会であうことはないのです。

南極なんきょくにホッキョクグマがいない理由りゆう

ホッキョクグマが南極なんきょくにいないのは、大昔おおむかし氷河期ひょうがきおとずれるときまでに南極なんきょくにクマるい到達とうたつしていなかったからです。

「クマ動物どうぶつはいつから地球ちきゅうにいるの?」でふれているとおり、クマ動物どうぶつあらわれたのは、いまからやく2,000万年前まんねんまえ中央ちゅうおうヨーロッパ。それからだんだんと棲息地域せいそくちいきひろげていったのですが、いま南北なんぼくかれているアメリカ大陸たいりくをメガネグマがわたって南半球みなみはんきゅうまで到達とうたつしたときには、もう南極なんきょくとのあいだにはうみひろがっていて、クマるい南極大陸なんきょくたいりくわたることは出来できなかったのです。

なが時間じかんをかけて北極ほっきょく環境かんきょう適応てきおう

のこされた遺伝子いでんし研究けんきゅうから、ホッキョクグマはヒグマからやく15万年前まんねんまえ分岐ぶんきしたとかんがえられていましたが、この数年すうねん分岐ぶんきはもっとむかしいまからやく60万年前まんねんまえ大氷河だいひょうが時代じだいにまでさかのぼるというせつ有力ゆうりょくになってきました。最初さいしょ想像そうぞうしていたよりもかなりまえかれたということは、それだけなが時間じかんをかけてホッキョクグマは北極圏ほっきょくけんのきびしい自然環境しぜんかんきょう適応てきおうしてきたということ。そうなると、地球ちきゅうなかでもとく急速きゅうそく温暖化おんだんか環境汚染かんきょうおせん影響えいきょうがでているこの地域ちいきで、急激きゅうげき変化へんかにホッキョクグマはついていくことができないということになります。

このままだと北極圏ほっきょくけん環境かんきょうはひどくそこなわれてしまいます。すると、ホッキョクグマが生活せいかつりのとしている海氷かいひょうがなくなり、2100ねんまでにはホッキョクグマは絶滅ぜつめつをするとわれています。真剣しんけん地球ちきゅうかかえるこれらの問題もんだいときているのです。

また、ホッキョクグマの進化しんかについては、いま世界中せかいじゅう研究けんきゅうすすめられています。

ホッキョクグマのども(生後せいご28ヶ月かげつまでははグマといっしょ)

ホッキョクグマのしろでない⁉︎

ホッキョクグマはしろというイメージがありますが、実際じっさいいろ透明とうめい。ほとんどの哺乳動物ほにゅうどうぶつ体毛たいもうはメラニン色素しきそはたらきでひかりとおしません。ところが、ホッキョクグマの場合ばあい体毛たいもう空洞くうどうとなっているためにひかりとおし、ひかり反射はんしゃすることでしろえているだけなのです。

実際じっさいなつになると、あたり一面いちめんしろだった世界せかいみどりちゃなどのいろくわわるため、毛色けいろ黄色きいろっぽくえることがあります。また、動物園どうぶつえん飼育しいくされているホッキョクグマでは、なつみどりのコケの胞子ほうし空洞くうどうはいみ、緑色みどりいろのクマにえることがあります。

もともとホッキョクグマのしろいろは、あたり一面いちめんこおりでおおわれた北極圏ほっきょくけんでは保護色ほごしょくで、アザラシなどのりをするときなど、アザラシにつかることなく、仕留しとめることができるのです。

体毛たいもうしたにある地肌じはだくろく、貴重きちょう太陽たいようひかりねつがさないようになっています。空洞くうどうになった体毛たいもうととてもあつ脂肪しぼうそうが、ホッキョクグマをさむさからまもっているのです。

こんなあるかたもするホッキョクグマ

 

クマのからだ不思議ふしぎ

これまで「クマは環境かんきょうへの適応能力てきおうのうりょくたかい」ということにれてきましたが、そのとおり、棲息地域せいそくちいきをどんどんひろげるうえで、それぞれの環境それぞれにあった身体能力しんたいのうりょくにつけてきたのです。


クマはにおいやたかおと敏感びんかん

とくすぐれているのは嗅覚きゅうかくで、その能力のうりょく人間にんげんの2,000倍以上ばいいじょう、イヌの20倍以上ばいいじょうともわれています。クマは食料しょくりょう確実かくじつるためにこうしたすばらしい嗅覚きゅうかくそなえているのです。聴力ちょうりょく人間にんげんの3〜4ばいのイヌとおなじくらで、たかおと敏感びんかんです。

人間にんげんやサルなどの霊長類れいちょうるいとリスるいをのぞいたほとんどの哺乳動物ほにゅうどうぶついろをほとんど認識にんしきできないのですが、クマはすこいろがわかるようです。だからこそ、どのじゅくしているかなどがかるのかもしれません。しかし、視力しりょくは、ホッキョクグマ以外いがいおおくのクマではあまりくなく、近視きんしだということがわかっています。

嗅覚きゅうかくのすぐれたクマ

すぐれた運動神経うんどうしんけい

おおきなからだをもつクマですが、運動神経うんどうしんけいもよく、大人おとなのクマは時速じそく50きろめーとるはやさではしることができます。人間にんげんよりもはやはしることができるのです。およぐのも得意とくいで、とくにホッキョクグマははしるのは時速じそく40きろめーとるほどとほかのクマよりはややおそいものの、みず抵抗ていこうけないちいさなあたまとたっぷりたくわえた脂肪しぼう長時間ちょうじかん最長さいちょう3日間みっかかん記録きろくがあります)、平均へいきん150きろめーとるなが距離きょりをノンストップでおよぐことができます。


それ以外いがいにもすごい能力のうりょくがたくさん

木登きのぼりをするためにするどいツメをもつクマもおおく、熱帯ねったいのジャングルに南米なんべい唯一ゆいつのクマ「メガネグマ」などは、あま果物くだもの着生植物ちゃくせいしょくぶつきている植物しょくぶつみきえだいわをはる植物しょくぶつ)のもとめて15mめーとるものたかさののぼることができます。

木登きのぼりをするメガネグマ

このほかにも、地面じめんの下につくるシロアリをかえしてべるためにながいツメをもつナマケグマ、蜂蜜はちみつやハチのをなめとるためにながしたをもつマレーグマなど、クマはそれぞれが自然しぜんなか時間じかんをかけずにそれほどの手間てまなく食料しょくりょうることができるよう、からだ器官きかんまでもが進化しんかしてきた動物どうぶつなのです。

ながしたをもつマレーグマ

そして、わすれてならないのは学習能力がくしゅうのうりょく一度いちど簡単かんたん食料しょくりょうにありついてしまった場合ばあいなど、その経験けいけんわすれることはありません。だから、人間にんげんがむやみやたらに野生やせいのクマにエサをあげてしまうと、人間にんげんがいるところけばなにものはいるとクマはかんがえ、人間にんげん地域ちいき出没しゅつぼつ事故じこきてしまうのです。きちんとクマの能力のうりょく生態せいたい人間にんげん理解りかいする必要ひつよう があるのです。