ジャイアントパンダ
あの白と黒の可愛くて人気者のジャイアントパンダをヒグマやツキノワグマ、ホッキョクグマと同じ「クマ科」だと思っている人って結構いるよね。学者の中には、DNAの解析からジャイアントパンダをクマ科に入れる人が多いけれど、先生はクマの仲間ではないと考えているんだ。体つきや行動などがまったく違うからね。
DNA情報を分類学に使う考え方もあるけれど、DNAの情報は動物の分類にはあまり役立たないと思うんだ。かつて主流の生きものから突然変異によって枝分かれする分岐点は一定の間隔で現れると考えるところでまず疑問があるんだ。時計は一定のリズムで時を刻むよね。それと同じに一定の間隔で変化が起きているという前提で、進化を「分子時計」という時間軸で考える方法だよ。しかし、よく調べてみると、急激な環境の変化がDNAの変異(突然変異)をもたらすことがある、ということが分かったんだ。環境の急激な変化は一定ではないよね。例えば、ジャイアントパンダは笹の葉を食べるし、コアラは毒性の高いユーカリを消化することができるけど、これらの動物の祖先たちは、そうした植物は食べていなかったのに、ある特定の地域に棲むようになって、そこの環境が急激に変化して食物が欠乏するというようなことが起こると、やむを得ずにそうした植物を消化吸収できる体が突然変異によって現れ、それが生き残ることでササやユーカリを食べる動物が現れるということが考えられるよね。また、生きた化石と呼ばれるシーラカンスのように、急激な変化に遭遇することがなければ、原始的な姿をそのまま留めている生きものもいる。一定の間隔で突然変異が起きたら生きた化石というものは存在しないということになる。つまり、現在の生きものがもつDNA、つまり遺伝子情報は必ずしも正確な分類を表している訳ではないと言えるんだ。
生まれたばかりのジャイアントパンダ
ジャイアントパンダはおとなしい性格で、指は5本だけど竹を握るのに適した「6番目の指」がある。一方のクマたちは攻撃的な性格で、指は5本だ。赤ちゃんを見ても、その違いは明らかなんだ。動物の赤ちゃんというのは、原始的な祖先の性質、つまり、祖先の面影を強く残した姿をしているけれど、ジャイアントパンダの赤ちゃんは白く、尻尾が長い。一方のクマの方はイヌ科の他の動物同様、黒っぽく、しっぽは短い。大人になって体が大きくなっても尻尾の長さは変わらないからしっぽがないように見えるんだ。この特徴をみただけでも、ジャイアントパンダの祖先はクマ科の祖先とは遠いと考えられるんだ。