けもの塾

ウサギ

かわいいフォルムとフワフワの。イソップ童話どうわの「うさぎとカメ」に日本昔話にほんむかしばなしの「かちかちやま」、それからピーターラビット、ミッフィ、マイメロディ、ロジャーラビット・・・ウサギをモチーフとしたおはなし作品さくひんは、世界各国せかいかっこくかぞえきれないほどあります。それだけいまむかしもウサギは身近みぢか動物どうぶつというわけですね。

現在げんざいみみれているロップイヤー、とびきりの肌触はだざわりのレッキスなど、ペットとしてわれているウサギは200種類しゅるい以上いじょういるとわれています。これらはすべてイエウサギ(いえうさぎ)。またのをカイウサギ(いうさぎ)といいます。イエウサギはすべてヨーロッパに野生やせいするアナウサギを人間にんげん改良かいりょうしたものです。

アナウサギは生物分類学的せいぶつぶんるいがくてきには、「哺乳網ほにゅうこう - ウサギもく - ウサギ - アナウサギぞく」となります。ウサギもくには、まるでハムスターのようにあいくるしいナキウサギもあります。ウサギにはノウサギぞくもあり、このノウサギぞくとアナウサギぞくのウサギたちが世界せかい草原そうげんけまわっているのです。

それでは、ウサギもく野生動物やせいせいぶつをみていきましょう!

ウサギって、いつから地球ちきゅうにいるの?

まずはウサギとネズミののこと

前歯まえば門歯もんし)のかたちから、ネズミとウサギがおなじグループにぞくするとおもわれがち。しかし、ネズミは齧歯目げっしもく、ウサギはウサギもく重歯目じゅうしもく)にぞくします。どちらも、まえ一生いっしょうつづけるため、かたいものをかじってもすりってなくなることはありません。

ウサギもく門歯もんし齧歯目げっしもくとはちがい、前歯まえば第一門歯だいいちもんし)のすぐうしろに2つ門歯もんし(くさび状門歯じょうもんし)があります。門歯もんしが2れつとなっているため、ウサギもく重歯目じゅうしもくともばれています。齧歯目げっしもくとウサギもくをあわせて、グリレス大目だいもくいます。

ウサギの起源きげんはまだ調査研究中ちょうさけんきゅうちゅう

「ネズミ」の「まずはネズミの歴史れきしから」でおはなししたように、グレリス大目だいもく動物どうぶつはもちろん、とても数多かずおおくの化石かせき分子ぶんしについてのデータから、すべての哺乳動物ほにゅうどうぶつは、いまからおおよそ6,600万年前まんねんまえ出現しゅつげんしたプロトゥンギュラトゥム・ドナエ(Protungulatum donnae)というおな祖先そせんから進化しんかをしてきたとかんがえられています。

しかし、現在げんざい きている動物どうぶつ遺伝情報いでんじょうほう分子ぶんしレベルで研究けんきゅうすると、いまから8,500万年まんねんほどまえ齧歯目げっしもくからウサギもくはわかれたのではないかというせつもあります。実際じっさい現存げんそんするウサギもく最古さいこ化石かせき中国ちゅうごくやモンゴル、きたアメリカから出土しゅつどしたもので、4,400万年前まんねんまえころの始新世ししんせいのものです。また、3,000万年まんねんほどまえ漸新世ぜんしんせいのパレオラグス(Paleolagus)とばれる化石かせきもアメリカから出土しゅつどしています。

このように、ほか動物どうぶつおなじように、ウサギもく進化しんか歴史れきしについても、まだまだわからないことがあり、いま研究けんきゅうつづけられているのです。

始新生ししんせいのイメージ

 

世界せかいにはどんなウサギがいるの?

現在げんざい野生やせい棲息せいそくしているウサギは、211ぞくやく60しゅ
早速さっそく、どんなウサギがいるかみてみましょう。

【ウサギもく動物どうぶつ

[ ]ない表示ひょうじは、棲息地せいそくち成獣せいじゅう平均体重へいきんたいじゅう(kgきろぐらむ)

ナキウサギ(Ochotonidae)
ナキウサギぞくOchotona[アジア、きたアメリカ、ひがしヨーロッパの寒冷地かんれいち/0.15kg]
○アカナキウサギ(O. rutila
○アフガンナキウサギ(O. rufescens
○アルタイナキウサギ(O. pallasi
○イリナキウサギ(O. iliensis
○オオミミナキウサギ(O. macrotis
○ガオリゴングナキウサギ(O. gaoligongensis
○カムナキウサギ(O. kamensis
○キタナキウサギ(O. hyperborea
  ・エゾナキウサギ(O. hyperborea yesoensis
○クチグロナキウサギ(O. curzoniae
○カンシュクナキウサギ(O. cansus
○クビワナキウサギ(O. collaris
○グロバーナキウサギ(O. gloveri
○コズロフナキウサギ(O. koslowi
○ステップナキウサギ(O. pusilla
○ダウリアナキウサギ(O. daurica
○タカネナキウサギ(O. alpina
○チベットナキウサギ(O. thibetana
○チュウゴクアカナキウサギ(O. erythrotis
○チンリンナキウサギ(O. huangensis
○トーマスナキウサギ(O. thomasi
○ヌブラナキウサギ(O. nubrica
○ヒマラヤナキウサギ(O. himalayana
○フォレストナキウサギ(O. forresti
○ムリナキウサギ(O. muliensis
○ラダックナキウサギ(O. ladacensis
○ラマナキウサギ(O. lama
○ロイルナキウサギ(O. roylei
○ロッキーナキウサギ(O. princeps

ロッキーナキウサギ

ウサギ(Leporidae)
アマミノクロウサギぞくPentalagus日本にほん奄美大島あまみおおしま徳之島とくのしま/1.3~2.7㎏]
○アマミノクロウサギ(P. furnessi)

アマミノクロウサギ(切手きって

ブッシュマンウサギぞくBunolagusきたアフリカの砂漠さばく/1.5~1.8㎏]
○ブッシュマンウサギ(Bunolagus monticularis

ブッシュマンウサギ(切手きって

アカウサギぞくPronolagusみなみアフリカからケニア/1.3~3㎏]
○スミスアカウサギ(P. rupestris
○ナタールアカウサギ(P. crassicaudatus
○ランドアカウサギ(P. randensis

メキシコウサギぞくRomerolagus[メキシコ中央部ちゅうおうぶ高山こうざん/0.4~0.6㎏]
○メキシコウサギ(R. diazi)

アラゲウサギぞくCaprolagus[ネパール南部なんぶからインド北部ほくぶのヒマラヤ山脈さんみゃく/2~3㎏]
○アラゲウサギ(C. hispidus

ウガンダウサギぞくPoelagus中央ちゅうおうアフリカ/2~3kg]
○ウガンダウサギ(P. marjorita

スマトラウサギぞくNesolagus[インドネシアのスマトラとう/1.5㎏]
○スマトラウサギ(N. netscheri
○アンナンシマウサギ(アンナンシマウサギ/N. timminsi

ピグミーウサギぞくBrachylagus[北米/0.5㎏以下]
○ピグミーウサギ(B. idahoensis

ピグミーウサギ

ノウサギぞくLepus[アフリカ大陸たいりくきたアメリカ大陸たいりく、ユーラシア大陸たいりく日本にほん/1.5~7㎏]
○アカクビノウサギ(L. saxatilis
○アビシニアノウサギ(L. habessinicus
○アラスカノウサギ(L. othus
○インドノウサギ(L. nigricollis
○エチオピアノウサギ(L. fagani
○カンジキウサギ(L. americanus
○グラナダノウサギ(L. granatensis
○ケープノウサギ(L. capensis
○コルシカノウサギ(L. corsicanus
○サバクノウサギ(L. tibetanus
○サバンナノウサギ(L. microtis
○シナノウサギ(L. sinensis
○チベットノウサギ(L. oiostolus
○チョウセンノウサギ(L. coreanus
○テワンテペックノウサギ(L. flavigularis
○トライノウサギ(L. tolai
○ニホンノウサギ(L. brachyurus
○ハイナンノウサギ(L. hainanus
○ビルマノウサギ(L. peguensis
○ホウキノウサギ(L. castroviejoi
○ホッキョクウサギ(L. arcticus
○マンシュウノウサギ(L. mandshuricus
○ヤブノウサギ(L. europaeus
○ヤルカンドノウサギ(L. yarkandensis
○ユキウサギ(L. timidus
○ユンナンノウサギ(L. comus
○アンテロープジャックウサギ(L. alleni
○オグロジャックウサギ(L. californicus
○オジロジャックウサギ(L. townsendii
○クロジャックウサギ(L. insularis
○シロワキジャックウサギ(L. callotis

アカクビノウサギ(みなみアフリカ)

ワタオウサギぞくSylvilagus[カナダ南部なんぶからアルゼンチン、パラグアイ/0.9~1.4㎏]
○アパラチアワタオウサギ(S. transitionalis
○オミルテメワタオウサギ(S. insonus
○コスタリカワタオウサギ(S. dicei
○サバクワタオウサギ(S. audubonii
○サンホセワタオウサギ(S. mansuetus
○トウブワタオウサギ(S. floridanus
○トレスマリアワタオウサギ(S. graysoni
○ニューイングランドワタオウサギ(S. transitionalis
○ヌマチウサギ(S. aquaticus
○ヒメヌマチウサギ(S. palustris
○ヒメワタオウサギ(S. idahoensis
○ブラシウサギ(S. bachmani
○ベネズエラワタオウサギ(S. varynaensis
○マンザノワタウサギ(S. congnatus
○メキシコワタオウサギ(S. cunicularius
○モリウサギ(S. brasiliensis
○ヤマワタオウサギ(S. nuttallii

トウブワタオウサギ

アナウサギぞくOryctolagus北欧ほくおう中東ちゅうとう一部地域いちぶちいき草原そうげん森林しんりん/1.5~3㎏]
○アナウサギ(O. cuniculus)

アナウサギ

 

日本にほんにはどんな野生やせいのウサギがいるの?

日本にほん自然環境しぜんかんきょうには「ナキウサギ」のウサギ、そして「ウサギ」の「アマミノクロウサギぞく」、「ノウサギぞく」のウサギが棲息せいそくしています。ペットのウサギは、ヨーロッパの草原そうげんなどにむアナウサギを改良かいりょうしたもので、野生やせいのアナウサギは日本にほんにはもともと棲息せいそくしていないのです。

【エゾナキウサギ】

北海道ほっかいどうかぎられた地域ちいきむエゾナキウサギ

ナキウサギはアジア、きたアメリカ、ひがしヨーロッパのふゆさむさがきびしい地域ちいきむウサギです。ナキウサギの英語名えいごめいは「パイカ(Pika)」、学名読がくめいよみで「ピカ」。(ポケットモンスターのピカチュウは、このナキウサギ「ピカ」がモデルとなっているようです。)

そのとおりナキウサギは、「ピチッピチッ」とか「キッキッ」とたかこえきます。このごえ縄張なわばりを主張しゅちょうしたり、家族かぞく天敵てんてきちかづいていることをおしえたり、仲間同士なかまどうし挨拶あいさつであるとかんがえられています。

日本にほん棲息せいそくするナキウサギは、ウラル、シベリア、モンゴル、中国ちゅうごく朝鮮ちょうせん、カムチャツカ半島はんとう、サハリンに棲息せいそくするキタナキウサギの亜種あしゅであるエゾナキウサギです。

エゾナキウサギ

エゾナキウサギは、北海道ほっかいどう標高ひょうこう1,500〜1,900mめーとる北見山地きたみさんち大雪山系たいせつざんけい日高山系ひだかさんけい夕張山地ゆうばりさんちのいろいろなおおきさのいわいしがゴロゴロとかさなったやま斜面しゃめん(ガレ)に棲息せいそくしています。

エゾナキウサギは、7万年まんねん~1、2万年前まんねんまえ氷河時代ひょうがじだい陸続りくつづきとなったサハリンをとおり、ヒグマやマンモスなどと一緒いっしょわたってきたとかんがえられています。海水かいすい温度おんどがり、こおりけだしたあと、エゾウサギはたかやま低地ていちでも気温きおんひく岩場いわばうつんでいったのです。

ちいさくてもさむさにつよ

エゾナキウサギは15せんちめーとるほどの体長たいちょうで、ウサギとはおもえないほどちいさくてまるみみ、5みりめーとるほどのをもちます。さむさにつよいため、冬眠とうみんはしません。食料しょくりょうすくなくなるふゆそなえ、なつわりからコケモモ、ヒメスゲ、エゾムラサキツツジ、シラネニンジン、イソツツジ、ヒメノガリヤスなどのくき、イワブクロやチングルマなどの高山植物こうざんしょくぶつはな、シダ、コケ、キノコをあつめ、風通かぜとおしの場所ばしょし、なか貯蔵室ちょぞうしつにためておく「貯食ちょしょく」という行動こうどうをとります。

かぎられた地域ちいきでしか棲息せいそくできないエゾナキウサギもこのところ、環境かんきょう悪化あっかなどの影響えいきょうによりかずらし、現在げんざいでは準絶滅危惧種じゅんぜつめつきぐしゅ指定していされているのです。

エゾナキウサギ 

【アマミノクロウサギ】

原始的げんしてきなウサギ

鹿児島県かごしまけん奄美大島あまみおおしま徳之島とくのしまには、アマミノクロウサギというウサギ野生動物やせいどうぶつ棲息せいそくしています。そのとおり、くろちかいこげ茶色ちゃいろをしたウサギで、おおきさは42~52せんちめーとるほど。みみちいさく、四肢ししみじかく、ほかのウサギのようにピョンピョンとおおきくぶことができないめずらしいウサギで、特別天然記念物とくべつてんねんきねんぶつ指定していされています。

アマミノクロウサギ

このウサギが大陸たいりくからわたってきたのは、アジア東部とうぶ琉球列島りゅうきゅうれっとう沖縄本島おきなわほんとうあたりで陸続りくつづきだったいまから1,000万年前まんねんまえのころ。プリオペンタラグス(Pliopentalagus)という化石種かせきしゅ現在げんざいのアマミノクロウサギの祖先そせんにあたるとかんがえられています。その、だんだんと海面かいめんがあがり、奄美大島あまみおおしま徳之島とくのしま大陸たいりくはなされたあともしまのわりとたかやまでアマミノクロウサギの祖先そせんたちはつづけ、また、ノウサギぞく侵入しんにゅうしてこなかったこともあり、今日こんにちまで独特どくとく原始的げんしてき姿すがた生態せいたいけついできたのです。


絶滅ぜつめつ
危機ききにさらされている!

アマミノクロウサギが棲息せいそくする奄美大島あまみおおしま徳之島とくのしまは、どちらも亜熱帯あねったい位置いちするしましまごとに日本にほんはいってきた年代ねんだいことなる固有種こゆうしゅ亜種あしゅおおいまきているため、わたしが「東洋とうようのガラパゴス」と名付なづけたほどゆたかな自然しぜんのこ島々しまじまです。アマミノクロウサギは、シイやカシなどの常緑広葉樹じょうりょくこうようじゅ原生林げんせいりんみ、休息きゅうそくのために樹洞じゅどう大木たいぼく根本ねもとあな使つかったり、出産しゅっさん子育こそだてのために特別とくべつあなったりします。

ウサギは自然しぜん なかではたいてい捕食ほしょくされるほうで、本来ほんらいならば絶滅ぜつめつをしないためにもたくさんのどもをそだてる必要ひつようがあります。ところがアマミノクロウサギは気候きこうが1ねんつうじてかなり安定あんていし、ハブ以外いがい肉食動物にくしょくどうぶつがいない環境かんきょう棲息せいそくをしています。天敵てんてき競争相手きょうそうあいてがほとんどいない地域ちいきだったので、1出産しゅっさん1匹いっぴきしかまない、つまり繁殖力はんしょくりょくひくくても現在げんざいまでびてきたのでしょう。

この地域ちいきにはハブという毒蛇どくへびむかしから棲息せいそく住民じゅうみんなやませてきましたが、1900ねん後半こうはん、そのヘビを退治たいじするため、インドあたりに棲息せいそくする食肉類しょくにくるいのフイリマングースを移入いにゅうしたのです。その結果けっか、マングースが繁殖はんしょくし、アマミノクロウサギをおびやかすようになってしまったのです。また、かつては人間にんげんわれていたイヌやネコがてられるなどしてもりみつき、アマミノクロウサギをおそったり、夜、交通事故こうつうじこなどにきこまれたりすることもおおく、アマミノクロウサギもどんどんかずり、現在げんざいでは絶滅危惧種ぜつめつきぐしゅ指定していされています。

アマミノクロウサギを交通事故こうつうじこからまもるためにてられた標識ひょうしき


【エゾユキウサギ(エゾノウサギ)】

さむ地域ちいき適応てきおうした「ゆき」ウサギ

ユキウサギは「ゆき」という名前なまえとおり、北極圏ほっきょくけんのツンドラやユーラシア大陸たいりく山岳地帯さんがくちたいなど気温きおんひく地域ちいき適応てきおうしたノウサギです。北海道ほっかいどうむエゾユキウサギは、おおくの亜種あしゅがあるユキウサギのひとつ(亜種あしゅ)です。エゾノウサギともばれています。

ユキウサギ(スコットランド)

ユキウサギは大形おおがたで、体長たいちょうは45~65せんちめーとるほど。体重たいじゅうは1.6~4きろぐらむにもなります。なつにはくらめの茶色ちゃいろだったは、ふゆにはゆきむようなしろえかわります。(ユキウサギのなかには、一年中いちねんじゅう茶色ちゃいろのままの種類しゅるいもいます。)ゆきうえはしるため、四肢ししながく、ゆきなかもれないようにうしろあしがおおきく発達はったつしています。また、さむ地域ちいきむため、みみから体温たいおんげないよう、からだたいしてみみちいさく、また、すべらないようにあしうらえているのが特徴とくちょうです。スイスアルプスなど一部いちぶ地域ちいき棲息せいそくするユキウサギは、地球温暖化ちきゅうおんだんか影響えいきょうけ、かずっていることから、ちか将来しょうらい絶滅ぜつめつ危機ききむかえることが心配しんぱいされています。


北海道ほっかいどう平原へいげんをかけるエゾユキウサギ

エゾユキウサギ

北海道ほっかいどうのエゾユキウサギは、体長たいちょう55せんちめーとる体重たいじゅうは3きろぐらむほどで、日本にほんにいる野生やせいのウサギでは最大さいだいです。北海道ほっかいどう平地へいち草原そうげん、そしてがまばらなはやしみ、植物しょくぶつえだ樹皮じゅひべています。

ユキウサギの学名がくめい(ラテン)は、「臆病おくびょうなウサギ」を意味いみするLepus timidus。エゾユキウサギもとても臆病おくびょうで、なつよるあいだふゆには昼間ひるま活動かつどうします。ふゆには根雪ねゆきふゆはじめにったゆきもり、はるになってもとけないこと)にあなり、そこをかくとしています。天敵てんてきはタカやフクロウ、キタキツネ。それらの天敵てんてきから最高時速さいこうじそく70きろめーとる(ちなみに人間にんげん世界記録せかいきろく保持者ほじしゃのウサイン・ボルトですら時速じそく37.57きろめーとる。カンガルーは68きろめーとる最速さいそく動物どうぶつはチーターの時速じそく112きろめーとるです。)と跳躍力ちょうやくりょくで、きびしい自然しぜんきのびているのです。

エゾユキウサギ(なつ

【ニホンノウサギ】

日本にほん固有種こゆうしゅのウサギ

北海道ほっかいどうをのぞき、本州ほんしゅう四国しこく九州きゅうしゅうとその周辺しゅうへんしま棲息せいそくしているノウサギがニホンノウサギです。日本固有種にほんこゆうしゅで、棲息せいそくする地域ちいきにより、つぎの4つの亜種あしゅけることができます。

・トウホクノウサギ(Lepus brachyurus angustidens
  ー東北とうほく中心ちゅうしん本州ほんしゅう日本海側にほんかいがわ固有亜種こゆうあしゅ

・サドノウサギ(Lepus brachyurus lyoni
  ー新潟県にいがたけん佐渡島さどがしま固有亜種こゆうあしゅ

・キュウシュウノウサギ(Lepus brachyurus brachyurus
  ー関東かんとうからみなみ太平洋側たいへいようがわ四国しこく九州きゅうしゅう固有亜種こゆうあしゅ

・オキノウサギ(Lepus brachyurus okiensis
  ー島根県しまねけん隠岐諸島おきしょとう固有亜種こゆうあしゅ

ニホンノウサギ

一番いちばんありふれていているけれど、とても大切たいせつ存在そんざい

日本にほん野生やせいのウサギとえばニホンノウサギをさすほど、むかしからおなじみのウサギで、標高ひょうこう2,700mめーとる高地こうちからなだらかなおかつづ地域ちいき、そして平地へいちにまで棲息せいそくし、とく農村のうそん人里ひとざとちか森林しんりんおおく、都市としちかくにも姿すがたあらわすことがあります。

北海道ほっかいどうのエゾユキウサギ(エゾノウサギ)よりちいさく、体長たいちょうは50せんちめーとる前後ぜんご体重たいじゅうは1.3~2.5きろぐらむほどです。いろ茶色ちゃいろすこくろっぽい茶色ちゃいろで、おなかだけがしろおおわれています。東北地方とうほくちほう日本海側にほんかいがわなどのニホンノウサギはふゆしろとなりますが、あたたかい地方ちほうのニホンノウサギは、ふゆでも茶色ちゃいろのままです。

みみは6~8せんちめーとるほどのながさがあり、自由自在じゆうじざいうごかすことができ、すぐれた聴力ちょうりょく敏感びんかんにテンやワシ、キツネなどの外敵がいてきかんることができます。

たいていは単独たんどく生活せいかつをし、つくらず、あかるいあいだやぶくさむら、かげをひそめています。べるのは、くさ植物しょくぶつくき樹皮じゅひなど。ほかにもススキなどのイネ科植物かしょくぶつ季節きせつによってべます。ねんに3~5かいほど繁殖はんしょく出産しゅっさんをするため個体数こたいすうおおく、タカやワシなどの猛禽類もうきんるいやテンやキツネなどの肉食獣にくしょくじゅうにとって大切たいせつ食料しょくりょうとなっています。つまり、ニホンノウサギは地域ちいき生態系せいたいけいにおいて、おおくの動物どうぶつ生命せいめいささえるとても大切たいせつ役割やくわりたしているのです。

トウホクノウサギ(撮影さつえい今泉忠明いまいずみただあき

 

ウサギのからだ不思議ふしぎ

みみ

ねらわれるからこそ発達はったつした器官きかん

自然しぜんなかおおくの動物どうぶつねらわれるウサギ。つまり、ウサギはネズミなどとおなじように食物連鎖しょくもつれんさ底辺ていへん位置いちしているのです。そのため、危険きけんをいちはやかんじとるため、軟骨なんこつ動耳筋どうじきんという筋肉きんにくでできたみみ左右さゆう自在じざいうごかして、まわりのちいさなおとでも敏感びんかんかんっています。高音こうおんにも敏感びんかんで42,000Hzへるつもの高周波こうしゅうはおとみみのそばでがたてるあの高音こうおんは、16,000~17,000Hzへるつです)ることができるとわれています。ちなみに年齢ねんれいによって低下ていかしますが、ヒトがることのできる周波数しゅうはすうは、20〜20,000へるつですから、どれほどウサギのみみがすぐれているかわかりますよね。

ケープウサギのみみ

みみなかにはえてなく、うえ写真しゃしんのようにおおくの毛細血管もうさいけっかんはしっています。ウサギは環境かんきょう変化へんか関係かんけいなく、体温調整たいおんちょうせいのできない恒温動物こうおんどうぶつです。汗腺かんせんあせ器官きかん)が発達はったつしていなく、あせをかかないわりに、みみかぜをあてて体温たいおんそとしているのです。はしときにはおおきなねつからだなかしょうじますが、そのねつからだそとすために、ウサギははしっているときでもみみてているのです。

はしるヤブノウサギ

ウサギのみみがいつごろから長いのかについては、まだくわしいことはわかっていません。しかし、化石かせきなどからむかしのウサギのみみちいさかったことはわかっています。棲息せいそくする場所ばしょ環境かんきょう適応てきおうした結果けっか、あのようにながみみになったのだとかんがえることができます。


【目】

視力しりょくくなくても、ひかりくさいろするど感知かんち

ウサギのおおくの草食動物そうしょくどうぶつおなじように、すようにかお両側りょうがわについています。これは危険きけん素早すばやかんじとるためで、両目りょうめによってえる範囲はんいは355°、つまりほぼすべての方角ほうがく見渡みわたすことできるのです。ただ、鼻先はなさきだけは死角しかくになっていて、ることができません。とてもひろ範囲はんいることのできるウサギのですが、視力しりょくは0.05~0.1ほど。その反対はんたいに、がた夕方ゆうがた活動かつどうする動物どうぶつ(「薄明薄暮性はくめいはくぼせい」といいます。イヌやネコ、ネズミも。)のため、ひかりかんじとる能力のうりょく人間にんげんの8ばいにもなります。きびしい自然環境しぜんかんきょうなかで、主食しゅしょくであるくさつけすため、みどりあお、そしてあかがわかる色覚しきかくをもっています。

トウブワタオウサギ(正面しょうめん

ウサギのあかい — そうおもっていませんか?

ウサギのくとき、ウサギのをいつもあかるというもいるとおもいます。しかし、野生やせいのウサギにはあかのウサギはいないのです。

全身ぜんしんしろのカイウサギ(ヨーロッパにむアナウサギを人間にんげん改良かいりょうした家畜かちく。そのなかでもペットにするものをイエウサギとぶこともあります)は、体毛たいもういろつく色素しきそ(メラニン色素しきそ)がりず、網膜もうまく(カメラでえば、フィルムにあたる組織そしき)のうしろにある血管けっかんけてえるためにあかいのです。色素しきそ不足ふそくしているはまぶしさによわ かったり、ほかにもはたらきのめん不利ふりなことがおおいため、野生やせいではあかのウサギはのこることはできず、その特徴とくちょうつぎ世代せだいけつがれることはないのです。

人間にんげん毛皮けがわ食用しょくよう、ペットなど目的もくてきにあった姿すがたのウサギをしてきました。突然変異とつぜんへんいたとえばみみのたれたウサギがまれても、それを大切たいせつに生まれてくる子どもも、そのまた子どもも代々だいだいけつぐように繁殖はんしょくをさせてきたのです。あかのカイウサギも例外れいがいではありません。あかをもつカイウサギには、しろの「ジャパニーズホワイト」、しろ胴体どうたいくろあしみみはなのまわり、尻尾しっぽという「ヒマラヤン」といった種類しゅるいがあります。

あかのカイウサギ(ヒマラヤン)

はな

はなをいつもうごかしているのには理由りゆうが・・・

はなをいつもピクピクうごかしているウサギ。嗅覚きゅうかく最大限さいだいげんはたらかせて、敏感びんかん天敵てんてきがどこにいるのか、仲間なかま交配こうはいする相手あいてはどれかなどをかんじとろうとしているのです。はなにはタテにがあり、うえのほうの皮膚ひふうごかして鼻孔びこうはなあな)をめしています。

ウサギの嗅覚きゅうかくはとてもすぐれていて、イヌとおなじくらいです。これはじつ人間にんげんの100万倍まんばいにあたるとわれています。

動物どうぶつ体内たいないで作り出し、そのにおいをかぐと特別とくべつ行動こうどうをひきこすような化学物質かがくぶっしつをフェロモンといます。ウマやネコなどをはじめとするおおくの動物どうぶつでは、このフェロモンをかん器官きかん(ヤコブソン器官きかん)がはなにあります。ところがウサギの場合ばあいには、かなり鼻先はなさきちかくにあるのも特徴とくちょうです。

ウサギのはな

ウサギは自然環境しぜんかんきょうなかではよわ存在そんざいでありながらも、するど感覚かんかくなどできのびてきたたくましい動物どうぶつでもあるのです。