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けもの塾

ウサギ

かわいいフォルムとフワフワの毛け。イソップ童話どうわの「うさぎとカメ」に日本昔話にほんむかしばなしの「かちかち山やま」、それからピーターラビット、ミッフィ、マイメロディ、ロジャーラビット・・・ウサギをモチーフとしたお話はなしや作品さくひんは、世界各国せかいかっこくに数かぞえきれないほどあります。それだけ今いまも昔むかしもウサギは身近みぢかな動物どうぶつというわけですね。

現在げんざい、耳みみが垂たれているロップイヤー、とびきりの肌触はだざわりのレッキスなど、ペットとして飼かわれているウサギは200種類しゅるい以上いじょういると言いわれています。これらはすべてイエウサギ(家いえうさぎ)。またの名なをカイウサギ(飼かいうさぎ)といいます。イエウサギはすべてヨーロッパに野生やせいするアナウサギを人間にんげんが改良かいりょうしたものです。

アナウサギは生物分類学的せいぶつぶんるいがくてきには、「哺乳網ほにゅうこう - ウサギ目もく - ウサギ科か - アナウサギ属ぞく」となります。ウサギ目もくには、まるでハムスターのように愛あいくるしいナキウサギ科かもあります。ウサギ科かにはノウサギ属ぞくもあり、このノウサギ属ぞくとアナウサギ属ぞくのウサギたちが世界せかいの草原そうげんを駆かけまわっているのです。

それでは、ウサギ目もくの野生動物やせいせいぶつをみていきましょう!

ウサギって、いつから地球ちきゅうにいるの?

まずはウサギとネズミの歯はのこと

前歯まえば(門歯もんし)の形かたちから、ネズミとウサギが同おなじグループに属ぞくすると思おもわれがち。しかし、ネズミは齧歯目げっしもく、ウサギはウサギ目もく(重歯目じゅうしもく)に属ぞくします。どちらも、前まえの歯はは一生いっしょう伸のび続つづけるため、硬かたいものをかじってもすり減へってなくなることはありません。

ウサギ目もくの門歯もんしは齧歯目げっしもくとはちがい、前歯まえば(第一門歯だいいちもんし)のすぐ後うしろに2つ目めの門歯もんし(くさび状門歯じょうもんし)があります。門歯もんしが2列れつとなっているため、ウサギ目もくは重歯目じゅうしもくとも呼よばれています。齧歯目げっしもくとウサギ目もくをあわせて、グリレス大目だいもくと言いいます。

ウサギの起源きげんはまだ調査研究中ちょうさけんきゅうちゅう

「ネズミ」の「まずはネズミの歴史れきしから」でお話はなししたように、グレリス大目だいもくの動物どうぶつはもちろん、とても数多かずおおくの化石かせきや分子ぶんしについてのデータから、すべての哺乳動物ほにゅうどうぶつは、今いまからおおよそ6,600万年前まんねんまえに出現しゅつげんしたプロトゥンギュラトゥム・ドナエ(Protungulatum donnae)という同おなじ祖先そせんから進化しんかをしてきたと考かんがえられています。

しかし、現在げんざい 生いきている動物どうぶつの遺伝情報いでんじょうほうを分子ぶんしレベルで研究けんきゅうすると、今いまから8,500万年まんねんほど前まえ、齧歯目げっしもくからウサギ目もくはわかれたのではないかという説せつもあります。実際じっさいに現存げんそんするウサギ目もくの最古さいこの化石かせきは中国ちゅうごくやモンゴル、北きたアメリカから出土しゅつどしたもので、4,400万年前まんねんまえころの始新世ししんせいのものです。また、3,000万年まんねんほど前まえの漸新世ぜんしんせいのパレオラグス(Paleolagus)と呼よばれる化石かせきもアメリカから出土しゅつどしています。

このように、他ほかの動物どうぶつと同おなじように、ウサギ目もくの進化しんかの歴史れきしについても、まだまだわからないことがあり、今いまも研究けんきゅうが続つづけられているのです。

始新生ししんせいのイメージ

 

世界せかいにはどんなウサギがいるの?

現在げんざい、野生やせいに棲息せいそくしているウサギは、2科か11属ぞくの約やく60種しゅ。
早速さっそく、どんなウサギがいるかみてみましょう。

【ウサギ目もくの動物どうぶつ】

[ ]内ないの表示ひょうじは、棲息地せいそくち/成獣せいじゅうの平均体重へいきんたいじゅう(kgきろぐらむ)

ナキウサギ科か(Ochotonidae)
ナキウサギ属ぞく(Ochotona)[アジア、北きたアメリカ、東ひがしヨーロッパの寒冷地かんれいち/0.15kg]
○アカナキウサギ(O. rutila)
○アフガンナキウサギ(O. rufescens)
○アルタイナキウサギ(O. pallasi)
○イリナキウサギ(O. iliensis)
○オオミミナキウサギ(O. macrotis)
○ガオリゴングナキウサギ(O. gaoligongensis)
○カムナキウサギ(O. kamensis)
○キタナキウサギ(O. hyperborea)
  ・エゾナキウサギ(O. hyperborea yesoensis)
○クチグロナキウサギ(O. curzoniae)
○カンシュクナキウサギ(O. cansus)
○クビワナキウサギ(O. collaris)
○グロバーナキウサギ(O. gloveri)
○コズロフナキウサギ(O. koslowi)
○ステップナキウサギ(O. pusilla)
○ダウリアナキウサギ(O. daurica)
○タカネナキウサギ(O. alpina)
○チベットナキウサギ(O. thibetana)
○チュウゴクアカナキウサギ(O. erythrotis)
○チンリンナキウサギ(O. huangensis)
○トーマスナキウサギ(O. thomasi)
○ヌブラナキウサギ(O. nubrica)
○ヒマラヤナキウサギ(O. himalayana)
○フォレストナキウサギ(O. forresti)
○ムリナキウサギ(O. muliensis)
○ラダックナキウサギ(O. ladacensis)
○ラマナキウサギ(O. lama)
○ロイルナキウサギ(O. roylei)
○ロッキーナキウサギ(O. princeps)

ロッキーナキウサギ

ウサギ科か(Leporidae)
アマミノクロウサギ属ぞく(Pentalagus)[日本にほんの奄美大島あまみおおしま、徳之島とくのしま/1.3~2.7㎏]
○アマミノクロウサギ(P. furnessi)

アマミノクロウサギ(切手きって)

ブッシュマンウサギ属ぞく(Bunolagus)[北きたアフリカの砂漠さばく/1.5~1.8㎏]
○ブッシュマンウサギ(Bunolagus monticularis)

ブッシュマンウサギ(切手きって)

アカウサギ属ぞく(Pronolagus)[南みなみアフリカからケニア/1.3~3㎏]
○スミスアカウサギ(P. rupestris)
○ナタールアカウサギ(P. crassicaudatus)
○ランドアカウサギ(P. randensis)

メキシコウサギ属ぞく(Romerolagus)[メキシコ中央部ちゅうおうぶの高山こうざん/0.4~0.6㎏]
○メキシコウサギ(R. diazi)

アラゲウサギ属ぞく(Caprolagus)[ネパール南部なんぶからインド北部ほくぶのヒマラヤ山脈さんみゃく/2~3㎏]
○アラゲウサギ(C. hispidus)

ウガンダウサギ属ぞく(Poelagus) [中央ちゅうおうアフリカ/2~3kg]
○ウガンダウサギ(P. marjorita)

スマトラウサギ属ぞく(Nesolagus)[インドネシアのスマトラ島とう/1.5㎏]
○スマトラウサギ(N. netscheri)
○アンナンシマウサギ(アンナンシマウサギ/N. timminsi)

ピグミーウサギ属ぞく(Brachylagus)[北米/0.5㎏以下]
○ピグミーウサギ(B. idahoensis)

ピグミーウサギ

ノウサギ属ぞく(Lepus)[アフリカ大陸たいりく、北きたアメリカ大陸たいりく、ユーラシア大陸たいりく、日本にほん/1.5~7㎏]
○アカクビノウサギ(L. saxatilis)
○アビシニアノウサギ(L. habessinicus)
○アラスカノウサギ(L. othus)
○インドノウサギ(L. nigricollis)
○エチオピアノウサギ(L. fagani)
○カンジキウサギ(L. americanus)
○グラナダノウサギ(L. granatensis)
○ケープノウサギ(L. capensis)
○コルシカノウサギ(L. corsicanus)
○サバクノウサギ(L. tibetanus)
○サバンナノウサギ(L. microtis)
○シナノウサギ(L. sinensis)
○チベットノウサギ(L. oiostolus)
○チョウセンノウサギ(L. coreanus)
○テワンテペックノウサギ(L. flavigularis)
○トライノウサギ(L. tolai)
○ニホンノウサギ(L. brachyurus)
○ハイナンノウサギ(L. hainanus)
○ビルマノウサギ(L. peguensis)
○ホウキノウサギ(L. castroviejoi)
○ホッキョクウサギ(L. arcticus)
○マンシュウノウサギ(L. mandshuricus)
○ヤブノウサギ(L. europaeus)
○ヤルカンドノウサギ(L. yarkandensis)
○ユキウサギ(L. timidus)
○ユンナンノウサギ(L. comus)
○アンテロープジャックウサギ(L. alleni)
○オグロジャックウサギ(L. californicus)
○オジロジャックウサギ(L. townsendii)
○クロジャックウサギ(L. insularis)
○シロワキジャックウサギ(L. callotis)

アカクビノウサギ(南みなみアフリカ)

ワタオウサギ属ぞく(Sylvilagus)[カナダ南部なんぶからアルゼンチン、パラグアイ/0.9~1.4㎏]
○アパラチアワタオウサギ(S. transitionalis)
○オミルテメワタオウサギ(S. insonus)
○コスタリカワタオウサギ(S. dicei)
○サバクワタオウサギ(S. audubonii)
○サンホセワタオウサギ(S. mansuetus)
○トウブワタオウサギ(S. floridanus)
○トレスマリアワタオウサギ(S. graysoni)
○ニューイングランドワタオウサギ(S. transitionalis)
○ヌマチウサギ(S. aquaticus)
○ヒメヌマチウサギ(S. palustris)
○ヒメワタオウサギ(S. idahoensis)
○ブラシウサギ(S. bachmani)
○ベネズエラワタオウサギ(S. varynaensis)
○マンザノワタウサギ(S. congnatus)
○メキシコワタオウサギ(S. cunicularius)
○モリウサギ(S. brasiliensis)
○ヤマワタオウサギ(S. nuttallii)

トウブワタオウサギ

アナウサギ属ぞく(Oryctolagus)[北欧ほくおう・中東ちゅうとうの一部地域いちぶちいきの草原そうげんや森林しんりん/1.5~3㎏]
○アナウサギ(O. cuniculus)

アナウサギ

 

日本にほんにはどんな野生やせいのウサギがいるの?

日本にほんの自然環境しぜんかんきょうには「ナキウサギ科か」のウサギ、そして「ウサギ科か」の「アマミノクロウサギ属ぞく」、「ノウサギ属ぞく」のウサギが棲息せいそくしています。ペットのウサギは、ヨーロッパの草原そうげんなどに棲すむアナウサギを改良かいりょうしたもので、野生やせいのアナウサギは日本にほんにはもともと棲息せいそくしていないのです。

【エゾナキウサギ】

北海道ほっかいどうの限かぎられた地域ちいきに棲すむエゾナキウサギ

ナキウサギはアジア、北きたアメリカ、東ひがしヨーロッパの冬ふゆの寒さむさがきびしい地域ちいきに棲すむウサギです。ナキウサギの英語名えいごめいは「パイカ(Pika)」、学名読がくめいよみで「ピカ」。(ポケットモンスターのピカチュウは、このナキウサギ「ピカ」がモデルとなっているようです。)

その名なの通とおりナキウサギは、「ピチッピチッ」とか「キッキッ」と高たかい声こえで鳴なきます。この鳴なき声ごえは縄張なわばりを主張しゅちょうしたり、家族かぞくに天敵てんてきが近ちかづいていることを教おしえたり、仲間同士なかまどうしの挨拶あいさつであると考かんがえられています。

日本にほんに棲息せいそくするナキウサギは、ウラル、シベリア、モンゴル、中国ちゅうごく、朝鮮ちょうせん、カムチャツカ半島はんとう、サハリンに棲息せいそくするキタナキウサギの亜種あしゅであるエゾナキウサギです。

エゾナキウサギ

エゾナキウサギは、北海道ほっかいどうの標高ひょうこう1,500〜1,900mめーとるの北見山地きたみさんち、大雪山系たいせつざんけい、日高山系ひだかさんけい、夕張山地ゆうばりさんちのいろいろな大おおきさの岩いわや石いしがゴロゴロと積つみ重かさなった山やまの斜面しゃめん(ガレ場ば)に棲息せいそくしています。

エゾナキウサギは、7万年まんねん~1、2万年前まんねんまえの氷河時代ひょうがじだい、陸続りくつづきとなったサハリンを通とおり、ヒグマやマンモスなどと一緒いっしょに渡わたってきたと考かんがえられています。海水かいすいの温度おんどが上あがり、氷こおりが溶とけだしたあと、エゾウサギは高たかい山やまや低地ていちでも気温きおんの低ひくい岩場いわばに移うつり棲すんでいったのです。

小ちいさくても寒さむさに強つよ い

エゾナキウサギは15㎝せんちめーとるほどの体長たいちょうで、ウサギとは思おもえないほど小ちいさくて丸まるい耳みみ、5㎜みりめーとるほどの尾おをもちます。寒さむさに強つよいため、冬眠とうみんはしません。食料しょくりょうが少すくなくなる冬ふゆに備そなえ、夏なつの終おわりからコケモモ、ヒメスゲ、エゾムラサキツツジ、シラネニンジン、イソツツジ、ヒメノガリヤスなどの葉はや茎くき、イワブクロやチングルマなどの高山植物こうざんしょくぶつの花はな、シダ、コケ、キノコを集あつめ、風通かぜとおしの良よい場所ばしょで干ほし、巣すの中なかの貯蔵室ちょぞうしつにためておく「貯食ちょしょく」という行動こうどうをとります。

限かぎられた地域ちいきでしか棲息せいそくできないエゾナキウサギもこのところ、環境かんきょうの悪化あっかなどの影響えいきょうにより数かずを減へらし、現在げんざいでは準絶滅危惧種じゅんぜつめつきぐしゅに指定していされているのです。

エゾナキウサギ 

【アマミノクロウサギ】

原始的げんしてきなウサギ

鹿児島県かごしまけんの奄美大島あまみおおしまと徳之島とくのしまには、アマミノクロウサギというウサギ科かの野生動物やせいどうぶつが棲息せいそくしています。その名なの通とおり、真まっ黒くろに近ちかいこげ茶色ちゃいろの毛けをしたウサギで、大おおきさは42~52㎝せんちめーとるほど。耳みみが小ちいさく、四肢ししが短みじかく、他ほかのウサギのようにピョンピョンと大おおきく跳とぶことができない珍めずらしいウサギで、特別天然記念物とくべつてんねんきねんぶつに指定していされています。

アマミノクロウサギ

このウサギが大陸たいりくから渡わたってきたのは、アジア東部とうぶと琉球列島りゅうきゅうれっとうが沖縄本島おきなわほんとうあたりで陸続りくつづきだった今いまから1,000万年前まんねんまえのころ。プリオペンタラグス(Pliopentalagus)という化石種かせきしゅが現在げんざいのアマミノクロウサギの祖先そせんにあたると考かんがえられています。その後ご、だんだんと海面かいめんがあがり、奄美大島あまみおおしまと徳之島とくのしまが大陸たいりくと切きり離はなされたあとも島しまのわりと高たかい山やまでアマミノクロウサギの祖先そせんたちは生いき続つづけ、また、ノウサギ属ぞくが侵入しんにゅうしてこなかったこともあり、今日こんにちまで独特どくとくな原始的げんしてきな姿すがたと生態せいたいを受うけついできたのです。


絶滅ぜつめつ
の危機ききにさらされている!

アマミノクロウサギが棲息せいそくする奄美大島あまみおおしまと徳之島とくのしまは、どちらも亜熱帯あねったいに位置いちする島しま。島しまごとに日本にほんに入はいってきた年代ねんだいが異ことなる固有種こゆうしゅや亜種あしゅが多おおく今いまも生いきているため、私わたしが「東洋とうようのガラパゴス」と名付なづけたほど豊ゆたかな自然しぜんが残のこる島々しまじまです。アマミノクロウサギは、シイやカシなどの常緑広葉樹じょうりょくこうようじゅの原生林げんせいりんに棲すみ、休息きゅうそくのために樹洞じゅどうや大木たいぼくの根本ねもとの穴あなを使つかったり、出産しゅっさん・子育こそだてのために特別とくべつな穴あなを掘ほったりします。

ウサギは自然しぜんの中 なかではたいてい捕食ほしょくされるほうで、本来ほんらいならば絶滅ぜつめつをしないためにもたくさんの子こどもを産うみ育そだてる必要ひつようがあります。ところがアマミノクロウサギは気候きこうが1年ねんを通つうじてかなり安定あんていし、ハブ以外いがいの肉食動物にくしょくどうぶつがいない環境かんきょうで棲息せいそくをしています。天敵てんてきと競争相手きょうそうあいてがほとんどいない地域ちいきだったので、1度どの出産しゅっさんで1匹いっぴきしか子こを産うまない、つまり繁殖力はんしょくりょくが低ひくくても現在げんざいまで生いき延のびてきたのでしょう。

この地域ちいきにはハブという毒蛇どくへびが昔むかしから棲息せいそくし住民じゅうみんを悩なやませてきましたが、1900年ねんの後半こうはん、そのヘビを退治たいじするため、インドあたりに棲息せいそくする食肉類しょくにくるいのフイリマングースを移入いにゅうしたのです。その結果けっか、マングースが繁殖はんしょくし、アマミノクロウサギをおびやかすようになってしまったのです。また、かつては人間にんげんに飼かわれていたイヌやネコが捨すてられるなどして森もりに棲すみつき、アマミノクロウサギを襲おそったり、夜、交通事故こうつうじこなどに巻まきこまれたりすることも多おおく、アマミノクロウサギもどんどん数かずが減へり、現在げんざいでは絶滅危惧種ぜつめつきぐしゅに指定していされています。

アマミノクロウサギを交通事故こうつうじこから守まもるために立たてられた標識ひょうしき


【エゾユキウサギ(エゾノウサギ)】

寒さむい地域ちいきに適応てきおうした「雪ゆき」ウサギ

ユキウサギは「雪ゆき」という名前なまえの通とおり、北極圏ほっきょくけんのツンドラやユーラシア大陸たいりくの山岳地帯さんがくちたいなど気温きおんが低ひくい地域ちいきに適応てきおうしたノウサギです。北海道ほっかいどうに棲すむエゾユキウサギは、多おおくの亜種あしゅがあるユキウサギのひとつ(亜種あしゅ)です。エゾノウサギとも呼よばれています。

ユキウサギ(スコットランド)

ユキウサギは大形おおがたで、体長たいちょうは45~65㎝せんちめーとるほど。体重たいじゅうは1.6~4㎏きろぐらむにもなります。夏なつには暗くらめの茶色ちゃいろだった毛けは、冬ふゆには雪ゆきに溶とけ込こむような白しろに生はえかわります。(ユキウサギの中なかには、一年中いちねんじゅう茶色ちゃいろの毛けのままの種類しゅるいもいます。)雪ゆきの上うえを走はしるため、四肢ししが長ながく、雪ゆきの中なかに埋うもれないように後うしろあしが大おおきく発達はったつしています。また、寒さむい地域ちいきに棲すむため、耳みみから体温たいおんが逃にげないよう、体からだに対たいして耳みみが小ちいさく、また、滑すべらないように脚あしの裏うらに毛けが生はえているのが特徴とくちょうです。スイスアルプスなど一部いちぶの地域ちいきに棲息せいそくするユキウサギは、地球温暖化ちきゅうおんだんかの影響えいきょうを受うけ、数かずが減へっていることから、近ちかい将来しょうらい、絶滅ぜつめつの危機ききを迎むかえることが心配しんぱいされています。


北海道ほっかいどうの平原へいげんをかけるエゾユキウサギ

エゾユキウサギ

北海道ほっかいどうのエゾユキウサギは、体長たいちょう55㎝せんちめーとる、体重たいじゅうは3㎏きろぐらむほどで、日本にほんにいる野生やせいのウサギでは最大さいだいです。北海道ほっかいどうの平地へいちや草原そうげん、そして木きがまばらな林はやしに棲すみ、植物しょくぶつの葉はや根ね、枝えだ、樹皮じゅひを食たべています。

ユキウサギの学名がくめい(ラテン語ご)は、「臆病おくびょうなウサギ」を意味いみするLepus timidus。エゾユキウサギもとても臆病おくびょうで、夏なつは夜よるの間あいだ、冬ふゆには昼間ひるまも活動かつどうします。冬ふゆには根雪ねゆき(冬ふゆの初はじめに降ふった雪ゆきが積つもり、春はるになってもとけないこと)に穴あなを掘ほり、そこを隠かくれ家がとしています。天敵てんてきはタカやフクロウ、キタキツネ。それらの天敵てんてきから最高時速さいこうじそく70㎞きろめーとる(ちなみに人間にんげんは世界記録せかいきろく保持者ほじしゃのウサイン・ボルトですら時速じそく37.57㎞きろめーとる。カンガルーは68㎞きろめーとる。最速さいそくの動物どうぶつはチーターの時速じそく112㎞きろめーとるです。)と跳躍力ちょうやくりょくで、きびしい自然しぜんを生いきのびているのです。

エゾユキウサギ(夏なつ)

【ニホンノウサギ】

日本にほん固有種こゆうしゅのウサギ

北海道ほっかいどうをのぞき、本州ほんしゅうや四国しこく、九州きゅうしゅうとその周辺しゅうへんの島しまに棲息せいそくしているノウサギがニホンノウサギです。日本固有種にほんこゆうしゅで、棲息せいそくする地域ちいきにより、次つぎの4つの亜種あしゅに分わけることができます。

・トウホクノウサギ(Lepus brachyurus angustidens)
  ー東北とうほくを中心ちゅうしんに本州ほんしゅうの日本海側にほんかいがわに棲すむ固有亜種こゆうあしゅ

・サドノウサギ(Lepus brachyurus lyoni)
  ー新潟県にいがたけん佐渡島さどがしまに棲すむ固有亜種こゆうあしゅ

・キュウシュウノウサギ(Lepus brachyurus brachyurus)
  ー関東かんとうから南みなみの太平洋側たいへいようがわ、四国しこく、九州きゅうしゅうに棲すむ固有亜種こゆうあしゅ

・オキノウサギ(Lepus brachyurus okiensis)
  ー島根県しまねけんの隠岐諸島おきしょとうに棲すむ固有亜種こゆうあしゅ

ニホンノウサギ

一番いちばんありふれていているけれど、とても大切たいせつな存在そんざい

日本にほんで野生やせいのウサギと言いえばニホンノウサギをさすほど、昔むかしからおなじみのウサギで、標高ひょうこう2,700mめーとるの高地こうちからなだらかな丘おかが続つづく地域ちいき、そして平地へいちにまで棲息せいそくし、特とくに農村のうそんや人里ひとざとに近ちかい森林しんりんに多おおく、都市としの近ちかくにも姿すがたを現あらわすことがあります。

北海道ほっかいどうのエゾユキウサギ(エゾノウサギ)より小ちいさく、体長たいちょうは50㎝せんちめーとる前後ぜんご、体重たいじゅうは1.3~2.5㎏きろぐらむほどです。毛けの色いろは茶色ちゃいろや少すこし黒くろっぽい茶色ちゃいろで、お腹なかだけが白しろい毛けに覆おおわれています。東北地方とうほくちほうの日本海側にほんかいがわなどのニホンノウサギは冬ふゆ、白しろい毛けとなりますが、暖あたたかい地方ちほうのニホンノウサギは、冬ふゆでも茶色ちゃいろのままです。

耳みみは6~8㎝せんちめーとるほどの長ながさがあり、自由自在じゆうじざいに動うごかすことができ、すぐれた聴力ちょうりょくで敏感びんかんにテンやワシ、キツネなどの外敵がいてきを感かんじ取とることができます。

たいていは単独たんどくで生活せいかつをし、巣すを作つくらず、明あかるい間あいだは藪やぶや草くさむら、木きの陰かげに身みをひそめています。食たべるのは、草くさや植物しょくぶつの葉はや根ね、茎くき、樹皮じゅひなど。他ほかにもススキなどのイネ科植物かしょくぶつも季節きせつによって食たべます。年ねんに3~5回かいほど繁殖はんしょく・出産しゅっさんをするため個体数こたいすうが多おおく、タカやワシなどの猛禽類もうきんるいやテンやキツネなどの肉食獣にくしょくじゅうにとって大切たいせつな食料しょくりょうとなっています。つまり、ニホンノウサギは地域ちいきの生態系せいたいけいにおいて、多おおくの動物どうぶつの生命せいめいを支ささえるとても大切たいせつな役割やくわりを果はたしているのです。

トウホクノウサギ(撮影さつえい:今泉忠明いまいずみただあき)

 

ウサギの体からだの不思議ふしぎ

【耳みみ】

ねらわれるからこそ発達はったつした器官きかん

自然しぜんの中なかで多おおくの動物どうぶつに狙ねらわれるウサギ。つまり、ウサギはネズミなどと同おなじように食物連鎖しょくもつれんさの底辺ていへんに位置いちしているのです。そのため、危険きけんをいち早はやく感かんじとるため、軟骨なんこつと動耳筋どうじきんという筋肉きんにくでできた耳みみを左右さゆう自在じざいに動うごかして、まわりの小ちいさな音おとでも敏感びんかんに感かんじ取とっています。高音こうおんにも敏感びんかんで42,000Hzへるつもの高周波こうしゅうはの音おと(耳みみのそばで蚊かがたてるあの高音こうおんは、16,000~17,000Hzへるつです)聞きき取とることができると言いわれています。ちなみに年齢ねんれいによって低下ていかしますが、ヒトが聞きき取とることのできる周波数しゅうはすうは、20〜20,000㎐へるつですから、どれほどウサギの耳みみがすぐれているかわかりますよね。

ケープウサギの耳みみ

耳みみの中なかには毛けは生はえてなく、上うえの写真しゃしんのように多おおくの毛細血管もうさいけっかんが走はしっています。ウサギは環境かんきょうの変化へんかに関係かんけいなく、体温調整たいおんちょうせいのできない恒温動物こうおんどうぶつです。汗腺かんせん(汗あせを出だす器官きかん)が発達はったつしていなく、汗あせをかかない代かわりに、耳みみに風かぜをあてて体温たいおんを外そとに出だしているのです。走はしる時ときには大おおきな熱ねつが体からだの中なかで生しょうじますが、その熱ねつを体からだの外そとに出だすために、ウサギは走はしっている時ときでも耳みみを立たてているのです。

走はしるヤブノウサギ

ウサギの耳みみがいつ頃ごろから長いのかについては、まだ詳くわしいことはわかっていません。しかし、化石かせきなどから昔むかしのウサギの耳みみは小ちいさかったことはわかっています。棲息せいそくする場所ばしょと環境かんきょうに適応てきおうした結果けっか、あのように長ながい耳みみになったのだと考かんがえることができます。


【目】

視力しりょくは良よくなくても、光ひかりと草くさの色いろを鋭するどく感知かんち

ウサギの目めは多おおくの草食動物そうしょくどうぶつと同おなじように、突つき出だすように顔かおの両側りょうがわについています。これは危険きけんを素早すばやく感かんじとるためで、両目りょうめによって見みえる範囲はんいは355°ど、つまりほぼ全すべての方角ほうがくを見渡みわたすことできるのです。ただ、鼻先はなさきだけは死角しかくになっていて、見みることができません。とても広ひろい範囲はんいを見みることのできるウサギの目めですが、視力しりょくは0.05~0.1ほど。その反対はんたいに、明あけ方がたと夕方ゆうがたに活動かつどうする動物どうぶつ(「薄明薄暮性はくめいはくぼせい」といいます。イヌやネコ、ネズミも。)のため、光ひかりを感かんじとる能力のうりょくは人間にんげんの8倍ばいにもなります。きびしい自然環境しぜんかんきょうの中なかで、主食しゅしょくである草くさを見みつけ出だすため、緑みどりと青あお、そして赤あかがわかる色覚しきかくをもっています。

トウブワタオウサギ(正面しょうめん)

ウサギの目めは赤あかい — そう思おもっていませんか?

ウサギの絵えを描かくとき、ウサギの目めをいつも赤あかく塗ぬるという人ひもいると思おもいます。しかし、野生やせいのウサギには赤あかい目めのウサギはいないのです。

全身ぜんしんが真まっ白しろのカイウサギ(ヨーロッパに棲すむアナウサギを人間にんげんが改良かいりょうした家畜かちく。その中なかでもペットにするものをイエウサギと呼よぶこともあります)は、体毛たいもうや目めの色いろを作つくる色素しきそ(メラニン色素しきそ)が足たりず、網膜もうまく(カメラで言いえば、フィルムにあたる組織そしき)のうしろにある血管けっかんが透すけて見みえるために赤あかいのです。色素しきそが不足ふそくしている目めはまぶしさに弱よわ かったり、他ほかにも目めの働はたらきの面めんで不利ふりなことが多おおいため、野生やせいでは赤あかい目めのウサギは生いき残のこることはできず、その特徴とくちょうが次つぎの世代せだいに受うけつがれることはないのです。

人間にんげんは毛皮けがわや食用しょくよう、ペットなど目的もくてきにあった姿すがたのウサギを生うみ出だしてきました。突然変異とつぜんへんいで例たとえば耳みみのたれたウサギが生うまれても、それを大切たいせつに生まれてくる子どもも、そのまた子どもも代々だいだい受うけつぐように繁殖はんしょくをさせてきたのです。赤あかい目めのカイウサギも例外れいがいではありません。赤あかい目めをもつカイウサギには、真まっ白しろの毛けの「ジャパニーズホワイト」、白しろい胴体どうたいに黒くろい足あし、耳みみ、鼻はなのまわり、尻尾しっぽという「ヒマラヤン」といった種類しゅるいがあります。

赤あかい目めのカイウサギ(ヒマラヤン)

【鼻はな】

鼻はなをいつも動うごかしているのには理由りゆうが・・・

鼻はなをいつもピクピク動うごかしているウサギ。嗅覚きゅうかくを最大限さいだいげんに働はたらかせて、敏感びんかんに天敵てんてきがどこにいるのか、仲間なかまや交配こうはいする相手あいてはどれかなどを感かんじとろうとしているのです。鼻はなにはタテに割われ目めがあり、上うえのほうの皮膚ひふを動うごかして鼻孔びこう(鼻はなの穴あな)を開あけ閉しめしています。

ウサギの嗅覚きゅうかくはとても優すぐれていて、イヌと同おなじくらいです。これは実じつに人間にんげんの100万倍まんばいにあたると言いわれています。

動物どうぶつが体内たいないで作り出し、その匂においをかぐと特別とくべつな行動こうどうをひき起おこすような化学物質かがくぶっしつをフェロモンと言いいます。ウマやネコなどをはじめとする多おおくの動物どうぶつでは、このフェロモンを感かんじ取とる器官きかん(ヤコブソン器官きかん)が鼻はなの奥にあります。ところがウサギの場合ばあいには、かなり鼻先はなさきの近ちかくにあるのも特徴とくちょうです。

ウサギの鼻はな

ウサギは自然環境しぜんかんきょうの中なかでは弱よわい存在そんざいでありながらも、鋭するどい感覚かんかくなどで生いきのびてきたたくましい動物どうぶつでもあるのです。