活発でいたずら。そして優しくて人間に従順な動物と言えば、イヌ。世界にイヌは700~800品種あり、そのうちの331品種がジャパンケネルクラブに承認されています。その数は4億匹に及ぶと言われています。
私たちが大好きなイヌ(イエイヌ)は分類学的に「食肉目(ネコ目)ー イヌ亜目 ー イヌ下目 ー イヌ科 ー イヌ族 ー イヌ亜族 ー イヌ属 ー ハイイロオオカミ(種)― イエイヌ(亜種)」とすることもありますが、イエイヌを独立した種とする考え方もあります。
イヌ科は、37種~40種の動物で構成されており(分類学的に所説あります。)、ハイイロギツネ族、キツネ族、イヌ族に分けられ、タヌキはキツネ族、オオカミやコヨーテはイヌ族に入ります。
ネコ科にはライオンやトラなど、大型の動物がいますが、イヌ科にはそれほどまでに大きな動物はいませんが、群れで暮らすため、たくさんの個体で大きさをカバーし、コミュニケーション能力が発達しているのです。
それでは、イヌ科の野生動物たちを、くわしくみてみましょう。
イヌ科の動物っていつから地球にいるの?
ネコ科もイヌ科も祖先は、「ネコ科の動物はいつから地球にいるの?」でふれているように、今から約6,500万年前から4,500万年前、北米やヨーロッパに棲息していたミアキス(Miacis/「動物の母」という意味)であるとされています。ミアキスは体長30㎝くらいで、今のイタチのような外見。樹上で生活をする小形の捕食動物でした。
ミアキスの化石(フランス)
月日が流れ、ミアキスの個体数が増え、生存競争が激しくなると、森を離れて草原に追い出されるミアキスも出てきて、それらの中から約3,500万年前にはキノディクティス(Cynodictis)という動物へ進化していったと考えられています。一方、森に残ったミアキスはネコの祖先 へと進化をしていきました。
キノディクティスは、ミアキスと同じくらいの体長であったものの、草原で生き残るために脚力と持久力が高まり、筋肉質の体へだんだん進化していきました。その一方、ミアキスが備えていた(現代のネコのように)出し入れ自在な爪は走ることに適応するにつれて退化していったと考えられています。また、捕まえた獲物から肉をかみ切るための裂肉歯も大きく発達していったようです。
このキノディクティスから進化した体長1mほどのキノディスムス(Cynodesmus)が約3,000万年前に現れました。このキノディスムスが現在のリカオン属の祖先であるとされています。キノディスムスとはまた別に、キノディクティスから進化を遂げ、外見がオオカミに似たトマルクトゥス(Tomarctus)も約2,000万年前に誕生しました。このトマルクトゥスがリカオンを除く他のイヌ科動物の祖先とする説が有力です。隠れる場所の少ない草原でイヌ科動物は獲物を捕まえるために共同で狩りをすることを会得し、やがて群れを統率するリーダーが誕生し、群れで生活をするスタイルが定着したのです。
原始的な姿をとどめるヤブイヌ
今から約700万年前には、トマルクトゥスはリカオンを除く11属(タヌキ属、ヤブイヌ属、カニクイイヌ属、クルペオギツネ属、タテガミオオカミ属、オオカミギツネ属、ホッキョクギツネ属、ハイイロギツネ属、キツネ属、ドール属、イヌ属)に分かれ、その中のイヌ属が8種(アビシニアジャッカル、キンイロジャッカル、セグロジャッカル、ヨコスジジャッカル、コヨーテ、ニホンオオカミ、アメリカアカオオカミ、ハイイロオオカミ)に枝分かれしました。そして、ハイイロオオカミの原始的なタイプからオーストラリアのディンゴやイエイヌが分かれていったと考える学者もいます。この分岐の年代については色々な説があり、DNA(デオキシリボ核酸)を用いた分析や化石などからの研究が今も続けられています。
イヌ科にはどんな動物がいるの?
イヌ科には、オオカミやキツネ、タヌキも入ります。それでは、世界にいるイヌ科の動物を見てみましょう。
【イヌ科の動物】
[ ]内の表示は、棲息地/成獣の平均体重(kg)
コミミイヌ属(Atelocynus)
○コミミイヌ(A. microtis)[ペルー、ボリビア、ブラジル、コロンビア、エクアドル、ベネズエラなどのアマゾン熱帯雨林/8.4㎏]
イヌ属(Canis)
○ヨコスジジャッカル(C. adustus)[セネガルからソマリア、南アフリカ/5~14㎏]
○キンイロジャッカル(C. aureus)[セネガルからタイ、スリランカ/11㎏]
○コヨーテ(C. latrans)[アラスカ、カナダ、アメリカ本土/6.8~21㎏]
○オオカミ(別名:ハイイロオオカミ、タイリクオオカミ/C. lupus)[ユーラシア大陸、北アメリカ/25〜58㎏]
○セグロジャッカル(C. mesomelas)[南アフリカおよび北アフリカ/5.4~10㎏]
○アビシニアジャッカル(C. simensis)[エチオピア/14㎏]
セグロジャッカル
カニクイイヌ属(Cerdocyon)
○カニクイイヌ(C. thous)[コロンビア、ベネズエラからブラジル、アルゼンチン、ウルグア/5.7㎏]
カニクイイヌ
タテガミオオカミ属(Chrysocyon)
○タテガミオオカミ(C. brachyurus)[ブラジル東部からアルゼンチン北部/22㎏]
タテガミオオカミ
ドール属(Cuon)
○ドール(別名:アカオオカミ/C. alpinus)[西アジアから中国、インド、インドシナからジャワ/10~20㎏]
ドール(アカオオカミ)
フォークランドオオカミ属(Dusicyon)
○フォークランドオオカミ(D. australis)[フォークランド諸島/15kg]*絶滅
スジオイヌ属(Lycalopex)
○クルペオギツネ(L. culpaeus)[南米/8.6㎏]
○ダーウィンギツネ(L. fulvipes)[チリ/2~3㎏]
○チコハイイロギツネ(L. griseus)[チリ、アルゼンチンのパタゴニア地方、フォークランド諸島/4㎏]
○パンパスギツネ(L. gymnocercus)[南米/6.5㎏]
○セチュラギツネ(L. sechurae)[エクアドル南西部、ペルー北西部/4.1㎏]
○スジオイヌ(L. vetulus)[ブラジル中南部/4.2㎏]
チコハイイロギツネ
リカオン属(Lycaon)
○リカオン(L. pictus)[サハラ砂漠から南アフリカ/22㎏]
タヌキ属(Nyctereutes)
○タヌキ(N. procyonoides)[日本、朝鮮半島、中国やロシア東部/6㎏]
オオミミギツネ属(Otocyon)
○オオミミギツネ(O. megalotis)[アフリカ東部と南部の草原地帯/4.1㎏]
オオミミギツネ
ヤブイヌ属(Speothos)
○ヤブイヌ(S. venaticus)[中央アメリカ東部、南アメリカ北部/6㎏]
ハイイロギツネ属(Urocyon)
○ハイイロギツネ(U. cinereoargenteus) [アメリカ合衆国からコロンビア/3.8㎏]
○シマハイイロギツネ(U. littoralis)[アメリカ加州チャンネル諸島/1.9㎏]
ハイイロギツネ
キツネ属(Vulpes)
○ベンガルギツネ(V. bengalensis)[インド亜大陸/2.4㎏]
○ブランフォードギツネ(V. cana)[トルキスタン、アフガニスタン、イラン、バルーチスターンの乾燥地帯/1㎏]
○ケープギツネ(V. chama)[アンゴラ南部、ジンバブエ南部、ナミビア、ボツワナ南部、南アフリカ共和国の草原や半砂漠/3.5㎏]
○コサックギツネ(V. corsac)[アフガニスタン北部から旧 ソ連南部、バイカル湖付近までの乾燥地帯/2.3㎏]
○チベットスナギツネ(V. ferrilata)[チベット、ネパールの乾燥地帯/5.5㎏]
○ホッキョクギツネ(V. lagopus)[ユーラシアと北アメリカの北極地/3.2~9.4㎏]
○キットギツネ(V. macrotis)[北アメリカ ロッキー山脈の西方/2.5㎏]
○オグロスナギツネ(V. pallida)[コルドファン高原、リビア、セネガル、ナイジェリア、カメルーンの砂漠地帯/2.8㎏]
○オジロスナギツネ(V. rueppelli)[アフリカ北部、アラビア半島からアフガニスタン、バルーチスターンの砂漠、半砂漠地帯/3.2㎏]
○スウィフトギツネ(V. velox)[北アメリカのロッキー山脈東方にある砂漠や草原/2.1㎏]
○アカギツネ(V. Vulpes)[北半球のほぼ全域/2.2~14㎏]
○フェネック(V. zerda)[ヌビア砂漠からアルジェリア、シナイ半島およびアラビア半島の砂漠と半砂漠地帯/0.68㎏~1.6㎏]
チベットスナギツネ
日本にはどんな野生のイヌ科動物がいるの?
タヌキとアカギツネ ー 日本に現在棲息している野生のイヌ科動物は、この2種のみです。
【タヌキ】
タヌキといえば、昔話やアニメによく出てくるキャラクターで、日本ではとても馴染深い動物。しかし、タヌキは日本や朝鮮半島、中国、極東ロシアのみに棲息し、世界的にはとても珍しい動物と考えられているのです。旧ソ連の頃、毛皮をとるために移入されたタヌキが現在では、ヨーロッパ各地に広がりをみせているようですが、日本のタヌキとは同じ亜種ではないようです。タヌキは棲む場所の違いによって体の特徴が異なり、分類すると6つの亜種に分かれます。そのうち日本にはいるタヌキは、北海道に棲む「エゾタヌキ(Nyctereutes procyonoides albus)」そして本州と四国、九州に棲息する「ホンドタヌキ(Nyctereutes procyonoides viverrinus)」の2亜種となります。
エゾタヌキ
タヌキは山地から都市にまで幅広く棲息しています。基本、夜行性で雑食のため、夜には人や車の通行が少なくなり、しかも生ゴミの多い都会で十分に生活をすることができるのです。タヌキは古代のイヌに近いずんぐりむっくりとした体形をしていて、イヌ科の中でも原始的と言われています。イヌ科の祖先が草原に生活の場を求めていったことを前で触れましたが、タヌキは遠くの草原ではなく、もともと棲んでいた樹上から足もとの森林や湿地で棲み続けてきたのです。
性格はとても臆病で、大きな物音がすると気絶したふりをするといわれ、「死んだのかな?」と思ってそばに行くと、ぱっと目が覚めて逃げだすことから「狸寝入」という言葉ができたとされます。
タヌキはイヌ科には珍しく、単独、またはゆるいペアで行動し、子どもが10か月ほどで独立するまでは家族集団で生活をします。
体長は50~60㎝、尾長は15~20㎝ほど。エゾタヌキの方がホンドタヌキより被毛が長く、四肢も長めです。
ホンドタヌキ
【アカギツネ】
丸みを帯びた外見のタヌキと対照的な見目麗しいキツネ。日本では沖縄をのぞくほぼ全ての地域にアカギツネが棲息しています。北海道にいるのは、アカギツネの亜種である「キタキツネ(Vulpes vulpes schrencki)」、本州・四国・九州には、やはりアカギツネの亜種である「ホンドギツネ(Vulpes vulpes japonica)」が棲息しています。
キタキツネ
キタキツネとホンドギツネの違いは、キタキツネの方がやや大きく、毛色が明るめです。キタキツネは黒いタイツをはいたように、前と後の脚が黒くなっています。乳頭の数はキタキツネは6~8個、ホンドギツネは8~10個と異なり、頭骨の形などからもホンドギツネはアカギツネの亜種ではなく、日本固有種とする説もあるほどです。
ホンドギツネ
キツネもタヌキ同様、イヌ科には珍しく単独で行動します。冬になると夫婦で繁殖行動をし、8~10か月後の子別れの時期まで一緒に子育てをします。
他のイヌ科動物とは異なり、狩りを群れではなく単独で行う点や丸い瞳ではなく、縦型の瞳をもっている点など、キツネはネコ科動物に似ています。キツネは身体能力が高く、冬場などはジャンプをしながら雪の中にダイブし、ネズミなどの小動物を捕えます。キツネは地磁気(地球が発する磁力)を利用して距離を推測する能力があるらしく、そのために雪の下の獲物の位置が正確にわかると考える人もいるようです。しかし、キツネは優れた聴覚によって雪の下のネズミ類などを見つけ出しているのです。また、キツネは食べきることのできない獲物を土の中のいくつもの箇所に埋める習性がありますが、後からその場所をほどんどまちがわずに掘り当てることから、記憶力も優れているようです。
ジャンプして雪の中に飛び込むキツネ
日本にはもうオオカミはいないの?
日本にもかつてはニホンオオカミが棲息 し、イヌワシを除けば食物連鎖の頂点に立っていたのです。食物連鎖の頂点にあるということは、オオカミを捕食する哺乳類はいないということです。
オオカミ(日本ではすでに絶滅)
どうして絶滅したんだろう?
今でこそ製造業とIT産業が盛んな日本ですが、昔の日本人は田畑を耕し、作物を収穫する農耕民族でした。そのため、田畑を自然災害やシカ、イノシシといった野生生物から守ることが必要でした。オオカミはシカやイノシシなどの野生動物を捕食することから、人々はオオカミを畏れながらも尊び、田畑を守る神様として崇めてきたのです。ところが、明治時代になり、ヨーロッパ系のイエイヌが入ってくると同時に狂犬病やジステンパーなどの病気も入り、オオカミにもそれらの病気がうつり、広がっていったようです。そして、狩猟用の銃の性能が高まり、食肉や毛皮を求めて野生動物が大量に捕獲され、オオカミの食物となる動物の数が減り、オオカミは馬などの放牧動物を襲うようになったのです。また、日本に根付いていた動物を神格化する価値観を否定するような西洋の思想が入ってきたことにより、オオカミは忌まわしい動物として駆除されてきたのでしょう。さらに、農地を広げるために森林の伐採なども各地で起こり、オオカミはだんだんと姿を消し、1905年1月の捕獲が最後の記録となり絶滅したと考えられています。本州、四国、九州に棲息していたオオカミはニホンオオカミ。北海道にはハイイロオオカミの亜種のエゾオオカミが棲息していました。エゾオオカミはニホンオオカミもよりも早くに駆除され、絶滅しています。
絶滅したオオカミを取り戻せる?
日本をはじめオオカミが絶滅してしまった地域では、オオカミなどの天敵がいないため、シカやイノシシなどの野生の草食動物の数が激増し、地域の植物を食いつくし、田畑だけでなく、残された森林の生態系を破壊する事態が生じています。そのため、絶滅したオオカミをその地域に移入する試みを行っている国や地域もあります。しかし、ニホンオオカミはハイイロオオカミとは別種であり、ハイイロオオカミを放つということは強力な外来種を放すことになりますから、少なくとも本州、四国、九州ではまったく受け入れられません。
オオカミの母と子
オオカミとイエイヌ
オオカミは夫婦での生活を基本とし、狩りをするときには、力や性格などの優れたリーダーのもと、群れで戦略的に行動します。これは、自分たちよりも大きな動物を仕留めるために長い歴史のなかでだんだんと習得してきた行動です。群れで行動することも多いため、服従の印におなかを見せるなど、イエイヌに近いボディランゲージを使って積極的にお互いにコミュニケーションを取り合っています。
イエイヌはタイリクオオカミの古いタイプのシュウコウテンオオカミ(40万年ほど前の化石種)から分かれ、2万5,000年前ごろ、西アジアで人間と一緒に暮らすようになったとされます。
イヌ科動物とネコ科動物の違いって何だろう?
大きさについて
ネコ科動物には、トラやライオンといった体重が200㎏を超えるものから、2㎏にも及ばないほど小さなサビイロネコやクロアシネコまでいます。一方、イヌ科の最大はタイリクオオカミで、大きいものは80㎏にもなります。最小はフェネックで、2㎏未満という小ささです。
フェネック
野生動物では現在、ネコ科の方が圧倒的に体格のよい動物が多いのですが、2,000万年前~500万年前の北アメリカには、エピキオンというライオンのような骨格のイヌ科動物がいたと考えられています。死肉を食べ、骨までかみ砕くほどの強い顎をもっていましたが、大きな体格を維持するだけの食物をとり続けることができず、絶滅してしまったのです。
動物にとっては獲物をとることは死活問題です。大昔、樹上で暮らしていた動物の中で森に残ったのがネコ科の祖先、草原に出て行ったのがイヌ科の祖先になったことは、「イヌ科の動物はいつから地球にいるの?」ですでにお話をしている通り。ネコ科動物の祖先たちは、木の陰や茂みに身を潜め、一気に獲物をとる方法、一方のイヌ科動物の祖先たちは、隠れる場所の少ない草原をひたすら走り、持久戦とチームワークで獲物を仕留める方法を身につけたのです。ネコ科の場合、一気に獲物をとるにはバネのようにしなやかな肉体と瞬発力、そしてパワーが必要です。そのため、筋肉もだんだんと大きくなり、骨格もそれに伴って大きくなっていったのです。イヌ科の方は長距離を走りぬくために、疲労の少ないコンパクトな体を保ち、群れで狩りをするスタイルを定着させていったのです。こうして、イヌ科にはネコ科ほど大きな動物はいないということになったのです。
アビシニアジャッカルの群れ(エチオピア)
イエイヌとイエネコを比べた場合、イエイヌの方が大きい種類が多いと思います。イエイヌには大形のハイイロオオカミの血が混ざっているから、大小様々のイヌがいるのです。イエネコはリビアヤマネコだけからなるため大きさの変異の幅が小さいのです。もし、ボルドー・マスティフとかグレート・ピレニーズといった大きさのイエネコがいたら、その運動能力から考えると人間には危険すぎますよね。
大きも様々なイエイヌ
コミュニケーション能力について
群れで行動をする動物には、哺乳類の場合、ヒトやチンパンジー、ゴリラなどの霊長類、オオカミをはじめとするイヌ科動物、そしてハダカデバネズミなどがいます。これらの動物は他の個体と一緒、または近くで生活をするために、お互いの意思を伝え、理解する必要があります。イヌ科動物の多くは群れで生活をし、狩りをしますが、群れで生活をするものの、狩りは単独で行ったり、単独で生活をしながら群れで狩りをしたりする種類もいます。
オオカミの群れ
群れでいる時間が長い種類(ハイイロオオカミなど)の方が視線を交す時間も長く、積極的にコミュニケーションをとっているとする研究結果もあります。
リカオン
「アフリカの野犬」と呼ばれるリカオンは体長100cm前後のイヌ科動物。狩りでの成功率はライオンが20~30%なのに対し、リカオンは80%とものすごい狩りの能力をもちます。リカオンはたいてい6頭ほど、多い場合には30頭ほどの群れを作り、生活を共にしています。狩りの時には、仲間同士で声を出し合って積極的にコミュニケーションをとっています。狩りで遅れをとってしまった仲間を声を出して呼んだり、先頭に立つリカオンが疲れたときには、他のリカオンが先頭に立ったりとすばらしいチームワークを発揮します。また、怪我をした仲間を置き去りにすることなく、みんなで世話をしたり、子どもを群れで育てたりと、高い社会性をもつイヌ科動物なのです。こうしたリカオンの社会性は、高いコミュニケーション能力をもつからこそ保たれているのです。とても残念なことに、最近ではリカオンも、イエイヌの病気が伝染したりして劇的に数を減らし、絶滅危惧種に指定されています。
群れで狩りをするリカオン
一方、ネコ科動物はライオンを除き、ほとんどが単独で生活をし、単独で狩りをしています。母と子の間ではなめたり、鳴き声を出すことでお互いの存在を確認しあうコミュニケーションはあります。しかし、群れで狩りをすることがないため、成獣が繁殖期に異性を呼んだり、威嚇しあうために鳴き声をあげる以上に目立ったコミュニケーションはありません。
進化したイヌ類のこうしたすぐれたコミュニケーション能力がイエイヌにも受け継がれているからこそ、イエイヌは人間ともわりとスムースに親しくなれるのだと考えられます。
イエイヌ