今、世界を混乱に陥れている新型コロナ。この病原体をもたらしたのがコウモリだとも言われているけれど、果たして、コウモリやネズミは害獣で、人間に有害な影響しか与えない生きものなのかな?
まず、「害獣」という言葉について説明するよ。害獣とは人間の生活や活動に害をもたらす哺乳類のことで、それが昆虫の場合には「害虫」、鳥の場合には「害鳥」というんだ。反対に「益獣」とは、人間の生活や活動に有益な生きもののことなんだ。
コウモリやネズミは多くの種類の病原体を保有しているけれど、それは長い進化の歴史と関係があるんだ。
コウモリやネズミは人間よりもはるかに原始的で、人間が誕生するかなり以前から地球で活動をしていたんだ。現在のコウモリやネズミは、多くの哺乳動物がもつ遺伝物質の原型を体内に留めているという。それらの遺伝物質の中には病原体も含まれ、長い間、コウモリやネズミの体内に保存されてきた遺伝物質が変異をすることで感染力が高まり、やがて人間社会に深刻な影響を及ぼすことになるんだよ。
それでは、コウモリやネズミは害獣だから、すべてを駆除するのはどうだろう?コウモリやネズミは実に種類が多く、地球上の哺乳類の約半数近くを占めている。そんなコウモリやネズミがいなくなれば、地球の生態系は大きく崩れ、やがて人間にもその影響が多大に降りかかるはずだ。ネズミは多くの動物にとって貴重な栄養源。そのネズミがいなくなることで、例えばキツネやイタチなど多くの動物が飢餓に直面し、絶滅をする種類も出てくるはずだ。ひとつの種類の生きものが絶滅すると、その空いた地位をうめるように別の種類の動物が急激に繁殖をし、その影響でまた他の種類が行き場を奪われ、他の地域を占有していくなど、次々に悪影響が広がっていくこともあるんだ。また、アブラコウモリなどは1日に500匹もの蚊や蛾などの昆虫を食べ、生物多様性の面からも重要な動物で、日本では法律的に保護をしているほどなんだ。
いずれにせよ、「害獣」や「益獣」というのは、人間を中心とした考え方であり、生態系という大きな視点から見ると、どの生きものにも生存していることに意味があるという訳なんだ。