モグラのこぼれ話
モグラのうんことキノコ
モグラのトンネル状の巣のなかには、排泄物をためる空間(つまりトイレ)があります。
そこで発生するアンモニア菌を栄養にして生えるキノコが、「ナガエノスギタケ」、別名「モグラノセッチンタケ」(せっちん(雪隠)とはトイレのこと)です。このキノコは1700年代にはすでにヨーロッパで存在を知られていましたが、その下にモグラやトガリネズミのトイレがあるというのを発見したのは日本人で、今から25年ほど前のことです。このキノコをブナの森で見かけたら、その下にはモグラのトイレがあるということです。しかし、モグラが多くいるはずの畑などにはこのキノコは生えず、モグラだけでなくブナ科の植物とも密接な関係があると考えられています。このキノコによって、モグラの排泄物の臭いが分解され、空中に排出されるので、何世代にもわたって利用されるモグラの巣にとって、このキノコの働きがとても重要なのです。このキノコは、地中から地上の傘の部分まで全長50センチにもなることがあり、傘が直径15センチほどになります。食用も可能で、炒め物などにすると、しっかりとした食感と豊かな香りを楽しむことができます
ナガエノスギタケ
世にも奇妙な外見のホシバナモグラ
ホシバナモグラ
カナダ南東部やアメリカ東部にいるホシバナモグラの鼻先には、その名の通り、ホシのような形に赤っぽい22本の突起物が並んでいます。他のモグラがその一生のほとんどを地下で過ごすのとは異なり、ホシバナモグラはエサを求めて地上に出たり、水にも潜ったりすることだってできます。この鼻先はとても優れた触覚器官で、地下ではミミズや昆虫の幼虫、水中ではエビや小魚などを取るのに役に立っています。他のモグラに比べて尾が長く(体長10~13センチの半分の長さが尾)、冬場にはそこに脂肪を蓄えるため、太さが直径14ミリほどになることもあります。
モグラの目は退化している?それとも進化?
モグラの横顔
多くのモグラの目は、薄い皮膜で覆われているため、外からはなかなかみつかりません。しかし、中には直径1ミリほどの黒点として目を認めることのできる種類もいます。他の動物の目のように水晶体や網膜、視神経の痕跡はあるものの、ほとんど機能していないことがわかっています。光のない地中で生活をする上で、あまり役に立たない目はだんだんと今のような形に変化してきました。この目の代わりに素晴らしく研ぎ澄まされてきたのが、嗅覚と触覚です。それでは、モグラの目は退化したと単純にいうことができるでしょうか。答えはNO。「モグラは地中生活を送る上であまり役にたたない目を退化させながら、進化を遂げてきた」というのが正解です。つまり、使わない器官が徐々に退化するのも、進化の一過程と生物学では考えるのです。
モグラをペットにしたい!大丈夫?
つやつやの毛皮にずんぐりとした体形。そんな愛らしい姿のモグラを飼いたいと思う人もいるのではないでしょうか。しかし、モグラを無断で捕獲したり、飼育したりすることは2003年に制定された「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」(鳥獣保護法)で禁止されています。モグラが原因で何か問題が起きているとか、研究のために捕獲をする場合には、その地域の自治体に届け出をして、許可を得る必要があります。(但し、農業や林業を営む場合には、被害を防止する目的で許可なくモグラを害獣として捕獲することが認められています。)何よりも、モグラを飼育するのは大量のミミズが必要であったり、地中と同じような環境が必要であったりするため、とても難しいとされています。また、モグラの中には、その地域で絶滅の恐れのある種類もいます。モグラに限らず、野生生物をむやみやたらに捕獲するのは、その生物 を絶滅に追い込まないためにも、また安全面からも控えるべきなのです。
モグラはミミズに麻酔をかけて貯蔵する
ミミズを食べるモグラ
モグラは実に大食漢。一日に自分と同じ重さくらいの量のエサを食べ、半日くらい何も食べないと餓死してしまうのです。そのため、エサが少なくなる冬場に向けて大好物のミミズや幼虫をトンネルのような巣にある貯蔵室に蓄えておきます。モグラの唾液には麻酔成分が含まれているので、モグラにかみつかれたミミズや幼虫は仮死状態となります。そのため、貯蔵庫の中でエサを新鮮な状態のまま1~2か月保存することが可能となるのです。