日本に固有種が多いワケ
日本に固有種が多いわけは、日本列島の成り立ちの歴史にあります。日本列島は、はるか昔、大陸と陸続きでした。それが、長い年月をかけて切り離され、現在のような形になったのです。
野生生物の分布上、日本列島は北から北海道、本土(本州・四国・九州)、南西諸島の三つの地域に分けられますが、それは、大陸から切り離されて島になった時期が、それぞれの地域によって異なるためです。
上の図を見てください(『目でみる 日本列島のおいたち 湊正雄 築地書院』より)。南西諸島は鮮新世とよばれる哺乳類が最も繁栄した古い時代に大陸から切り離されて島になったために、そのころの哺乳類が生き残っています。例えばアマミノクロウサギは360万年前ころに出現し、大陸から渡ってきたものです。大陸ではその後もっと進化したウサギが栄えたために、アマミノクロウサギは大陸では滅び、南西諸島の奄美大島と徳之島でだけ生き残ったというわけです。このように他の地域と分断されることで固有種は生まれるのです。
本土にはツキノワグマやニホンカモシカなど、主として更新世とよばれる時代のものが生き残っています。この動物たちの祖先のほとんどは大陸では新たに現れた強い種との競合によって滅びてしまっています。本土が島になったおかげで生き残ってきたのです。
北海道が大陸と離れたのは完新世と呼ばれる比較的新しい時代ですから、ヨーロッパまで分布しているヒグマなど、大陸と同じ種類のものがたくさんすんでいます。大陸と分かれて島になった時期があまり古くないからです。
このように日本列島には数百万年前に出現したものから現代に生きる哺乳類がたくさん見られ、そのほぼ半数が固有種なのです。このさまざまな動物たちが何万年も生き続けることができたのはなぜでしょう。
それは、日本列島が南北に長く、気候的に寒い地域から暖かい地域まで変化に富んでおり、地形的にも平地から標高三千メートルを超す山岳地帯まで多様な環境があったからです。日本にやってきた動物たちは自分に合った場所を選んで生き抜くことができたのでしょう。そしてその固有種を取り巻く環境が、今日まで長く保たれてきたから固有種が多いのですね。